テディベアを脇に抱えながらおしるこを飲むちびっこ真ちゃん。本人にバレないようにこっそり写真を撮る。
バスケ部レギュラーの写真を売るようになってから盗撮スキルを取得したよ。将来は黒子くんと組んで探偵事務所でも立ち上げようかしら。尾行と盗撮はお任せとか言うとストーカーっぽいけど。
「あー! 緑間っちにみょうじっち」
甲高い声に二人して眉をひそめればひよこ頭がこっちに突進してきた。
「避けるなんてひどいっス」
「つい条件反射で」
「うるさいのだよ」
私とではなく自販機と熱い抱擁をかましてる黄瀬くんに真ちゃんが冷ややかな視線を送った。
このノリは正真正銘デルモかっこ笑いの黄瀬くんだ。
「オレが一人で困ってる間に二人は呑気にティータイムっスか?」
「探す気はあったよ。最後くらいに」
「最後って!」
「いや、ほら。黄瀬くんって犬っぽいからなんかどうにかなりそうじゃん」
帰巣本能みたいな? むしろ嗅覚でみんなの居る場所を探し当てるとかさ。
「冗談だよ。すぐに探すつもりだったんだよ?」
「みょうじっち……」
「君が一番高値で写真売れるからさ!」
「そんな理由なんスか?!」
涙目になる黄瀬くんを笑いながら撮る。そんな私達に真ちゃんはバカでも見るような目を向けてきた。ちょっと大魔王様に似たものを持ってるよね。真ちゃんが第二の大魔王になったら泣いちゃう。
「みょうじっち、オレに対してだけ冷たくないっスか?」
「黄瀬くんに対して冷たいのは私だけじゃないよ」
ガーンという効果音が似合いそうなくらい目に見えて落ち込んでる黄瀬くんの小さな頭を撫でる。やっぱ犬っぽいよね。
「こうやって頭撫でられるのって新鮮っス」
おお、なんか犬のしっぽが見える気がする。こんなんでなつくなんて駄菓子の彼より安い。ファンの子に教えてあげようかな。
「犬と飼い主の図だな」
「緑間っち、羨ましいからって変なこと言わないでほしいっス!」
「う、羨ましくなんかないのだよ! 言いがかりは寄せっ」
本当に子供同士の喧嘩にしか見えない。中学生なんて子供だから実際にそうなんだけど、今は見た目が見た目なだけに余計ね。
取り敢えず写真撮っておこう。
「はいはい、二人共そこまで」
言い合いを続ける二人の間に入る。保育士さんってこんな感じなんだろうなぁ。
「真ちゃんも黄瀬くんも頭くらいいつでも撫でてあげるから」
「別にそんなことして欲しいと頼んだ覚えは……っ」
「じゃあみょうじっちもう一回!」
真ちゃんは変わらずツンデレで黄瀬くんはやっぱ犬だ。二人の頭を軽く撫でる。
「甘やかして貰えるならこの姿も得っスね」
現金なやつだなぁ。
「そのままじゃ試合でれないじゃん」
「あ! やっぱり早く戻りたいっス」
「俺だって早く戻りたいのだよ」
バスケ馬鹿なんですねー。
黄瀬くんも見つかったことだし一回部室に戻ろう。あんまり長い間大魔王様と桃ちゃんを二人にしたくない。私の可愛い桃ちゃんに魔の手が伸びてたらいやだからね。