恐怖の大魔お……失敬、赤司様と共にちみっこくなったみんなを探しに学校内を回ることになった。


「ちなみに赤司くん」

「なんだい?」

「目立つので下ろしていい?」

「却下」


 間髪いれずに言いやがった。いいんだよ、これが可愛い子だったら喜んでやりますよ。でも、大魔王様の場合気を抜いた瞬間に首絞められそうで怖いんだよ。
 私がどういう状況に居るかと言うと、相変わらずの俺様っぷりを発揮して下さった赤司様が「頭が高い。オレを見下すなんて百年早い」と仰られ、強制的におんぶすることになったのです。校内でちびっこをおんぶとかさ、目立つことこの上ない。


「まずは部室から確認しようか」

「そうですね」

「早く歩け、のろま」

「小学生レベルの悪口だな」


 鼻で笑ったら本気で首絞められた。一瞬飛びかけた。このクソガキめ……。


「学習能力がないなんて、君は犬以下だね」


 ムカつく。でも、言い返したら今度こそ三途の川を渡ることになりそうだから我慢。
 いつか逆襲してやると心に誓ってると体育館についた。レギュラーではない一軍が練習してるはずなのにボールの音が聞こえない。大魔王様がいないからってサボってるんだろうか。


「赤司くん。中見てくるからここで待ってて」

「わかった」


 おお、すんなりと言うことを聞いた。流石に子供の姿を見せたくないんだろう。やっぱあとで弱みとして写真に残しておこう。


「さっさと確認してこないとその凹凸の少ない顔面にボール当ててまっ平らにするぞ」

「凹凸少ないとか言わないでっ」


 純粋な日本人なんだから仕方ないじゃない! 平安美人とか見てみろよ、岡目みたいな顔してんじゃん。
 若干涙目になりながらも解放された喜びを噛み締めて体育館に踏み込む。


「おや?」


 ポケットからデジカメを取り出してパシャリと一枚撮らせて貰う。
 レギュラーを抜いた一軍の皆様がバスケなど興味ないと言わんばかりにボールを放置して体育館の一角に集まっていた。貴重なシーンをありがとう。


「なにしてんですかー?」


 アホ峰くんのようにエロ本でも読んでたら、明日掲示板に貼り出してバスケ部の株落としてやろう。
 にやにやと人だかりにまざればエロ本なんかどうでもいいと思わせるめちゃめちゃ可愛い幼女が困った顔をしていた。


「おい、なに可愛い子困らせとんじゃボケ共!」


 近くにあった頭を思い切り殴る。驚いた顔をする野郎共をかき分けて幼女を保護するように抱き締めた。


「なまえちゃん?」


 安心したように私の名前を呼ぶ天使はまさしく桃ちゃん本人だ。例えあの豊満な胸がぺったんこになっていようとも桃ちゃんだ。だって、誘拐したいくらい可愛いんだもん。


「変なことされなかった? もしされてたら、こいつら全員社会的に抹殺した後に大魔王様に更に肉体的にも抹殺してもらうから安心して」

「だ、大丈夫だから」


 見た目だけじゃなくて中身も天使だね。大魔王様も桃ちゃんを見習うといいよ。
 いや、今はそんなことよりも桃ちゃんを困らせてたこいつらだ。


「写真に値がつかないモブ顔が可愛い子に近寄んなつーの。顔面整形するかレギュラーの座奪ってから出直してこい」

「なんだとっ」

「おっと、殴ってもいいけど自分の立場考えなよ」


 握り拳を作ってるやつにいやな笑みを向けながらカメラを構える。


「バスケ部一軍メンバー、レギュラーになれない鬱憤を女子生徒で晴らす。被害者Aのインタビュー付。なかなかいいネタになると思わない?」

「あ、赤司に頭上がんない奴が調子乗んな!」


 お前もだろーが!
 全力で突っ込みたくなった。


「そうですよ、私は赤司くんに頭が上がりませんよ。大魔王様の言いなりですよ」


 だからね、とさっき撮った写真を見せつける。練習を放棄し、可愛い可愛い桃ちゃん(幼女ver)に集っている場面。


「こんな写真を赤司くんに贈呈しちゃったりするんだよねぇ。一軍と二軍が総入れ替えとかあるかもな〜」

「お前!」

「この可愛い子ちゃんに土下座して謝るって言うなら、この写真消去してあげてもいいよ」


 大魔王様の権力すげーぜ。一瞬にして私なんかよりデカイ男子が言うこと聞いちゃうんだもん。
 桃ちゃんを困らせたことをしっかり謝ったので許してやろう。人の権力に頼った対処法でも可愛い子を守れるなら悔しくない。可愛いは正義です。





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