放課後、お小遣いを稼ぐ為の写真を撮りに体育館に乗り込もうとしてると子供が居た。迷子かなと声を掛けようかと思ったけど思い留めた。何故ならその子が赤かったから。
 赤い髪の毛を見たら即逃げろ。
 中学校生活を無事に過ごす為に作ったマイルールである。それに従ってなにも見ていない振りして通り過ぎようとした。


「おい」


 気のせい。気のせいだ。あの大魔王様の声なんて聞いていない。


「無視するとはいい度胸だな」


 気のせいじゃありませんでした!
 背中の方で感じた黒い威圧的なオーラは紛れもなく大魔王様のもの。逃げ出したい気持ちを抑えて恐る恐る振り返る。


「あれ?」


 居ない。やっぱり幻聴?


「どこを見てるんだ」


 声がいつもより低い位置から聞こえる。てか、声が若干違う気もする。
 頭にいくつものクエッションマークを浮かべながら辺りを見回すとさっきの赤い少年と目が合った。


「頭が高い」


 その一言とほぼ同時に尻餅をついた。地味に痛い。
 この台詞を抜かし、人を転けさせる野郎は一人しかいない。


「あ、赤司くん?」


 尻餅ついたままの私を見下す真っ赤な髪の少年をじっと見つめる。僅かにつり上がった赤い目に高圧的な物言い。何よりちっこくてもイケメンとしか言い様のない整った顔立ちは大魔王様と同じである。


「か、可愛くない」

「なに? 死にたいって?」

「めめめめ滅相もございませんっ」


 いやだ、この子。
 顔は確かに可愛いよ。ちっちゃくてほっぺとかぷにぷにしたくなっちゃう勢いだけど態度が可愛くない!


「えーと、赤司くんの弟かな? お兄さんなら多分体育館に居ると思うよ」

「オレが赤司征十郎本人だ」


 バカを言っちゃいけない。バスケ部レギュラー陣の中では二番目くらいにちっさい大魔王様だけど、流石にここまでちまくはない。


「今、失礼なことを考えただろう」

「ごめんなさい! なにも失礼なことなんて考えてないのでカメラだけは壊さないで!」


 睨まれた時の恐ろしさが大魔王様本人のようだったから、つい条件反射で土下座してカメラを庇ってしまった。
 弱いものいじめ、だめ絶対。


「カメラを壊されたくなかったらおとなしく話を聞け」


 命令だよ。お願いじゃなくて命令しやがるよ。本当にこの子赤司くん本人じゃん。こえーよ。カメラ壊さないで。


「よくあるご都合主義とやらでどうやらオレ達はこんな姿になったようだ」

「ご都合主義とか言わないで。夢が崩れるんでなんかもっと無理矢理な理由でいいからつけようよ」

「仕方ないだろう。考えるのが面倒なんだ」

「さいですか」


 もっとこう紫原くんが持ってきた謎のお菓子によってとか、おは朝占いの呪いによってとかあっただろうよ。


「今、夢のない台詞のが気になってスルーしちゃったけど“オレ達”ってまさか……」

「憶測だが他のやつらもこうなってるはずだ」

「まじか!」


 こりゃ大変だ。私のオアシスである桃ちゃんとか黒子くんとかも子供になってるってこと?


「今すぐ探しましょう!」


 そしてカメラに納めなくてはっ。黄瀬くんとか絶対高く売れるよ。一眼レフが私を待ってる!


「痛い! 痛いよ、赤司くんっ」

「痛くしてるんだから当然だろ。また人の写真を売ろうとか考えて。次やったら写真同好会潰すって言ったよね?」


 天使のような笑顔のはずなのに黒いよ。ついでに床についたままの手を踏み潰すのやめて! 痛いんだってば。





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