さっきのセクハラを水に不問にするから写真のことは黙っててとエロ峰くんに頼み込んでから部室に放り込んだ。野放しにしとくと青峰くんが一番危険な気がする。覗きとか普通にしそうで。
「これでよし!」
見付けにくそうな人達はもう部室に居るから後は簡単だ。
廊下におかしを置いてそのままカメラ片手に張り込む。周りから不審者を見るような目を向けられても気にしない。途中で声を掛けてきた先生には、野性動物の捕獲を試みてるのだと言ったら色々心配された。心配するなら部費寄越せ。じと目で見れば苦笑いを残して去っていった。お前のスキャンダラスな写真撮って新聞部に売り込んでやる。
心が荒んできたところで目当ての人物が現れた。本当にこれで見つけられるとは思わなかったよ。もしゃもしゃと廊下のど真ん中に置かれたおかしを食べる少年を撮る。
変な人に誘拐されないか少しだけ心配。簡単に物に釣られるなよ。
「あっちゃん」
「あーなまえちん」
「拾い食いはやめなさいな」
それを置いた私が言うのもあれなんだけどさ。外で同じことしちゃダメだからね。
「こういうのすんのなまえちんくらいじゃん」
「あっちゃんの中の私のイメージって……」
「おかしくれる変な子で赤ちんのパシリ」
否定できなくて泣きたくなった。あっちゃんには餌付けしてなつかれた感じだし、大魔王様に足蹴にされながらこき使われてるとこばっか見られてたしね。
それにしても、あっちゃんデカイな。子供にしてもサイズが今までのみんなと違う。昔から発育がよかったのか。
「おかしばっか食べてるのにあそこまでよく大きくなったもんだ」
「赤ちんが言うからおかし以外も食べてるし」
「それ、中学入ってからでしょうが」
それに、赤司くんはあっちゃんのオカンかよ。あーでもレギュラー陣に全員に対してそんな感じだった気もする。食堂で見かけた時、よく噛んで食べろとか口に物を入れながら喋るなとか注意してたな。大きなお子さん持ちの大魔王様か……怖いな。割烹着姿とか想像するんじゃなかった。
「そういや、なまえちんおどろかないんだねー」
「驚くってなにに?」
「俺がちっちゃくなってんのに」
「そんなちっちゃくないことにはビックリしたよ。子供になってんのはもう6人も見てるからね」
「みんなもこうなってんの? ウケる。黒ちんとかどんだけちっちゃいんだろ」
まだ黒子くんには会ってないんだよ。桃ちゃんの為にも早く見付けてあげたかったんだけどさ。遭遇率低そうな人達を先に見付けちゃったから。
「まあ、なんでもいいや。このままのがおかしいっぱい貰えるし」
「既に結構食べたあとだったの?」
「なんかすれ違う子達みんなおかしくれたんだぁ」
女子は子供好きだからね。その子の顔がよければ尚更。
「知らない人からあんま食べ物貰っちゃダメだよ、あっちゃん」
「前に赤ちんにも言われた」
またもやオカン発言。過保護としか言いようがない。
桃ちゃん曰くあっちゃんは大魔王様の命令しか聞かないらしい。かなり手懐けていらっしゃるようだ。
「なまえちん、なまえちん」
「なに?」
「おかしまだある?」
おかしのことしか頭にないのかよ。呆れながらもポケットから飴を出して渡す。
「部室であっくんのオカンが待ってるから行こうか」
早く行かないと私の命が危ないからね。おかしもストックがあるから今は飴で我慢しておくれ。ついでに飴をガリガリ噛まないで。なんか私も噛まれる気がして怖いから。