私の城とも呼べる写真同好会の部室を開けた瞬間顔の真横をなにかが物凄い勢いで通りすぎた。
「遅い」
不機嫌オーラ出しまくりの大魔王様の手には鋭利に削られたえんぴつが。桃ちゃんも私の両隣に居る二人も顔が青い。でもね、一番顔色悪いのは私だよ。血の気引いてるもん、絶対。
「人を待たせてるんだからもっと迅速に行動出来ないのかい?」
「ミドリンときーちゃん、二人も居るよ? だから時間掛かっちゃったんだよ」
桃ちゃんがフォローを入れてくれたお陰でなんとか生命の危機から逃れられた。
ありがとう桃ちゃん! 後で黒子くんの写真を贈呈させてください。
本当はゆっくり桃ちゃんとおしゃべりしたいけど、大魔王様の目が怖いから次探してこよう。
「いってきまーす」
ついてくると言う黄瀬くんを真ちゃんに託す。そのラッキーアイテムのテディベアで遊んであげてね!
残りの三人を早く見つけないとまたなんか飛んできそうで怖いけど疲れた。ちょっと息抜きしたってバチは当たらないはず。
のろのろと屋上に行く。折角だからさっきまでの写真の確認でもしようっと。
「お前、色気ねぇパンツはいてんな」
「えっ」
風でスカート捲れたのかと思って慌てて押さえる。でも、風なんか吹いたっけと足元を見れば生意気そうな子が私を見上げていた。
「青峰くん……」
「よぉ、貧乳女」
健康的に焼けた肌に生意気そうな顔。いかにもガキ大将って感じだ。
「誰が、貧乳だ! エロガキ!」
「お前以外いないだろ。胸ねぇなら下着くらい色気あるもんにしろよ」
「余計なお世話ってか見るな! スカートを捲るな!」
スカートをつかむ小さい手を叩き落とす。子供の姿なら何しても許されると思うなよ。
「減るもんじゃねーだろ」
「私の心がすり減るわっ」
そう言えば鼻で笑われた。可愛くない。……下にジャージはいておけばよかった。
「つーか、どうなってんだ?」
「何が?」
「起きたらガキみたいにちっさくなってたんだよ」
「あー私にもよくわかんない」
自分の身に起きてる事態に気付いてから珍しく頭を使ったのか少し疲れた顔をしてる。普段どんだけ頭使ってないんだよ。
みんなそんな風になってると今の状況を簡単に説明しておいた。青峰くんは大して驚くことなく「へぇ」と短く返事をしただけだった。
「この姿だったら女子更衣室とか入っても怒られなさそうだよな」
「そんなことしか考えてないのかよ」
「うるせーな。これでもテンパってんだよ」
そうは見えないよ。冷静に覗きについて考えてんじゃん。人のパンツ見てケチつけてきたじゃん。
「根に持つなよ。パンツくらいいいだろ」
「よくねーよ」
イラっとしたのでぐりぐりとツムジを押してやった。
迷信でしかないけど、これで身長伸びなくなってお腹を壊してしまえ。
「おま、やめろよ」
「ふはは、チビ峰くんなら怖くないね」
「まだ写真売ってること赤司に言うぞっ」
「卑怯だ!」
私も少し前に大魔王様の権力を行使したばっかだけど、同じことをやられるとは!
「口止め料としてマイちゃんの写真集あげたじゃん!」
「覚えてないね」
「このガングロ野郎……っ」
自分だって大魔王様には弱いくせににやにや笑いやがって。
好きでバスケ部の写真売ってる訳じゃないのに。バスケ部よりサッカー部とかのが人気だったらそっち行ってたよ。そもそも部費さえ貰えれば写真売って小銭稼いでないっつーの。