特になんの変化もなく、だらだらと時間ばかりが過ぎていく。
リボーンくんは私にわかっていないと言ったけれど、どれだけ綱吉くんを見ていてもやっぱり考えが変わることはない。
学校では獄寺くんと山本くんと楽しげに話したり、クラスの女子生徒が好きなのか顔を赤くさせていたり、ダメツナとからかわれたりして普通の男子中学生の毎日を送っている。自宅ではランボくん達の遊び相手をして時々爆発音とかが聞こえてくるのが気になるくらいでいいお兄ちゃんをやっている。この中の何処を見ればマフィアのボスに相応しいと思えるのか。
「学校お疲れ様です」
授業が終わった彼らの前に姿を見せると山本くんはにこにこ笑って手を振り、獄寺くんは威嚇してきて、綱吉くんは苦笑いを浮かべた。いつもと変わらない。
「今日も来てたんだね」
「行かないとリボーンくんに睨まれるので」
「なんかごめん」
謝る綱吉くんに気にしないでくださいと微笑む。
「なぁ、有無。俺たちこれから遊んで帰るんだけど一緒に行かないか?」
「誘っていただけるのは嬉しいんですが、片付けなきゃいけない仕事があるのでやめておきます」
山本くんは出会った当初から気さくで学校でも人気者なんだろうと思っていた。しかし、自殺騒動を起こしたことがあるくらい見えない部分は繊細なようだ。
先に帰ると伝えて三人と別れる。本物の中学生達に紛れて校門から外に出ると落ち着いた町並みから浮いている真っ赤なコブラが目に入った。
条件反射というかなんというか嫌な予感しかなかったから無言で踵を返す。しかし、それは無駄だった。強い力で後ろに引っ張られたのだ。視界の端に丁寧に塗られた赤いネイルが映る。
「久し振りだな、有無」
助手席に人を無理矢理座らせた女性がシニカルに笑う。
肩につくくらいの真っ赤な髪にワインレッドのスーツ。存在そのものが危険を知らせる真っ赤な人を私は一人しか知らない。
「哀川さんは相変わらずなようで」
「名字で呼ぶなって言ってんだろ」
「お久し振りです、潤さん」
「元気そうじゃん。中学生になってるのには驚いたけどな」
ばしばしと片手で肩を叩きながら彼女はハンドルを握り、車を発信させた。
地獄にでも連行されるのか。はたまた天国か。解らないけどこの人と一緒なら何処に行っても意味は同じだ。
「お前が京都から出たって聞いて、丁度こっちで仕事だから顔見に来たんだよ」
今度は一体なんの仕事だろうか。万能と言っても問題ない潤さんは請負人をやっている。なんともお似合いの仕事だ。真ん中に《負ける》という字が入っているのが気に入ってるらしい。
「いっくんに会ったんですね」
私が京都を出たことを告げた唯一の人物。
流石トラブルメーカー。潤さんと知り合う機会なんて大抵はなにかの事件に巻き込まれない限りないだろう。
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