時期的に考えてあの鴉の濡羽島だろう。やっぱりいっくんが名探偵になったのだろうか。そうだったならそのシーンを是非とも見たかった。


「あいつ、あたしの仕事取りやがったんだよ。まあ、それは休暇で行ったからいいんだけど」


 あ。何か潤さんの気にそぐわないことでもあったんだ。


「解決するっつーならちゃんと全部解決しろって話なんだよ。怠けてんじゃねえって怒鳴り付けに行ってやらなきゃ、疑問を疑問のままで放置するつもりだったんだぜ」

「いっくんらしいですね」

「戯言だかなんだか知らねえけどきっちりしろってんだ」


 潤さんは怒る。些細なことでも感情をしっかりと表に出す点は私ともいっくんとも正反対だ。でも、だからこそ私達には必要なんだと思う。
 ぶつぶつと愚痴を交えながら事件の全容を聞き、いっくんのメイド好きを知った。妹キャラが不評だったから次はこれで攻めることにしよう。


「お前のご主人様にも会ってきたぜ」


 ご主人様という言葉に眉をひそめる。


「その言葉は適切ではありませんね。私は彼女の所有物ではありますが、彼女は私を飼い慣らしていません。彼女は決して私を求めません」


 だから、《城》の面々は彼女から離れた。求められていないのならば、せめて彼女と彼の邪魔をしないように。


「いい加減直せよ、そういうの。お前はお前だっつてんだろ。もっと自分の意思で動けよ」


 この人はいつだって真っ直ぐに私を怒ってくれる。だけど、それを直す気はない。直すなんて無理な話だ。誰かが私を作ってくれなきゃ私でいられない。私を証明してくれる人が居なければ、誰にもなれない。


「覚えとけ。あたしは#名前#を見放す気なんて更々ないんだからな」

「惚れちゃいそうなこと言わないで下さいよ」


 小さく笑う。
 潤さんは好きだけど少し苦手だ。私とは違ってちゃんと我があって、私なんかにも厳しくしたり、優しくしてくれたり、普通に接してくれる。それが酷く落ち着かない。それでも、潤さんには色々感謝している。


「最近妙なことに顔突っ込んでるらしいじゃねーか」


 妙なこと?
 疑問に思って首を傾げると、潤さんはいやらしく口角を上げていた。


「マフィアに入るとか入らないとかって話があるんだろ?」

「よくご存知ですね」

「あたしの人脈舐めんなよ」


 舐めてた訳ではないけど、まさかその話を知ってるとは思わなかった。



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