学ラン少年から逃げたせいで結局綱吉くんの学校での姿を観察することなく帰宅時間となった。律儀な綱吉くんは校門で待ってるとメールをくれた。


「あ、有無。どこ行ってたの?」

「十代目を待たせるなんて、お前何様だ」

「お。この間の奴じゃん」


 校門まで向かうと三者三様のリアクションで出迎えてくれた。


「お待たせしてしまってすみません。お久し振りですね、山本くん」

「覚えててくれたのな」


 嬉しそうに笑う山本くんは仏頂面の獄寺くんとは違って人懐っこいようだ。


「綱吉くん、聞きたいことがあるんですが」

「なに?」

「ここは普通の公立中学校ですよね?」

「そうだけど、どうしたの?」


 不思議そうにする彼に屋上での出来事を話すと、顔を青くさせながら「あの雲雀さんを殴ったの?」と驚いていた。しかし、私が驚いて欲しかったのはそこではなくトンファー振り回してる人が校内に居るというところだ。


「えっと、そのヒバリさんとやらは何者なんですか?」


 あの人もマフィアと言うなら頷ける。六道くんとも戦ってたし、格闘センスはかなり高い。


「多分、ただの風紀委員長……」

 多分ってなんですか、多分って。
 しかし、こうも彼が怯えてるということはヒバリさんは普段からああいう感じということか。


「あの雲雀を殴って、しかも無傷とかすげーのな」

「お前、本当に何者だよ」

「平和主義者のおねーさんです」


 そんな答えを返したら胡散臭いものを見る目で見られた。サイバーとはいえ元テロリストとか言った人が口にする台詞じゃないか。


「細かいことは気にしたら負けですよ」

「細かくねーよ!」

「何者かなんてそんなの自分の目で確かめればいいだけです。私が綱吉くんを観察するように獄寺くんも私を観察してれば解るかもしれませんよ」


 言葉に詰まった彼に笑いかけて「ストーカーはいやですよ」と言えばやっぱり睨まれた。


「その風紀委員長のヒバリさんもみなさんと同じマフィアなんですか?」

「リボーンは入れたつもりでいるけど、本人は何も知らないと思う」


 獄寺くんとは少し違うけど好戦的な性格で戦闘能力は死ぬ気状態の綱吉くんと同じくらいか。それをあのリボーンくんが見逃すはずない。私のことも無理矢理入れようとしてるくらいだからもうヒバリさんも頭数に入ってるんだろう。
 リボーンくんが何を考えてるかは知らないけど、このままならただのごっこ遊びと変わらない。マフィアと暴力の世界との間に引かれた一線があるように、こちらの世界とマフィアとの間にも一線は引かれている。彼らはそこに踏み込んでいない。境界線の上を歩いているだけ。巻き込まれただけ、と言うのはその証拠だ。自分の意思で戦火の中に飛び込めないのならばいつまで経っても変わらない。


「有無は結局どうするの? リボーンは勝手に話進めてるけど」

「もう少し見させて頂きますよ」


 マフィアに入るつもりは端っからないけど。
 どういうものなのか、何を持っているのか。興味引かれる部分はある。私には暴力の世界同様縁も所縁もない世界だけど、折角ここまで来たのだから見物させて貰うつもりだ。




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