こうやってネタばかりが溜まっていくんだよね
2023/08/18 06:57

まだ日も高いうちから二人は裸で絡み合っていた。
壁に手をついたフェイタンをフィンクスが後ろから抱きすくめて、胸や脇腹を撫でながら首筋にキスを落とす。強く吸い付いて赤い痕を残し、時に舌先で愛撫しながら、指先は性感帯を避けつつ肌を這い回る。
「……ふぅ、ん」
焦れったい手つきに喉から吐息混じりの声が漏れて、無意識のうちに内腿を擦り合わせてしまう。
「フィンクス」
「ん?」
「ギブアプ、しない?」
「しない」
大真面目な顔をして、フェイタンの外腿を撫で回しながら、きっぱりと断り愛撫を続けるフィンクス。
触れてほしい箇所を徹底的に避けて際どいところを掠める。そのたびにじくじくと熱を持つような疼きを覚え、身体の奥底がいっそう火照る。
「……ワタシもう無理。こんなの拷問ね」
「人聞きの悪いこと言うな。してみたいって言い出したのお前だろーがよ」
……確かに、それはそうなのだが。
「早くヤリてぇのはオレも同じだっての」
そう呟くとフィンクスはフェイタンの肩口に歯を立てた。甘噛み程度の強さだったが、感度の高まった肌には充分な刺激だ。びくんと跳ねる腰をその武骨な手で押さえつけ、もう一方の手で下腹部に触れる。
あと数センチメートル下へ……という所で彼の手が止まる。臍の真下で円を描きながら、内臓を温めるように擦られる。心地よいような焦れったいような感覚にじりじりしながらフィンクスの手首を掴むフェイタン。
「もう、それダメ」
「コレがダメなら何すりゃいいんだよ」
「アソコ触て」
「ダメだって。本番は最終日にあたる5日目だけ。その前の4日は性器への刺激は避ける。って書いてあっただろ」
そうなのだ。本にはそういった事が書かれていた。射精よりも精神的な交わりやらスキンシップやらに重きを置くことで、よりパートナーとの絆を深めることができるだとか何だとか。

二人が何をしているのかと言うと。ポリネシアンセックスにチャレンジしている最中だ。
ポリネシアンセックスとは……かいつまんで言うと、数日間かけて挿入をせずじっくり互いの体を愛撫し、最終日に挿入を行うというものだ。
試したいと言ったのはただの興味本位だった。別に彼との精神的繋がりを確かめたいとか思っているわけではない。10年そこらの付き合いではないのだし、今更確認する必要がない。
正直、フェイタンとしてはもう降りたくて仕方ないのだが……それはできそうもない。
意外とフィンクスは頭が固い。がさつで狡くてテキトーな反面、妙に真面目な所がある。
蜘蛛としての活動に限らず、何をするにも「ルール遵守の上で目標達成」というスタイルを好む。今回のセックスもある種のミッションとして捉えている節があるようだ。目標達成まであと一歩。こんないいところでご破算にするのも可哀想な話である。
「……」
黙り込んだ恋人を見かねたのか、フィンクスは宥めるように、フェイタンの小さな頭をぽんと叩いた。
「んなクセェ顔すんなよ。明日んなったらイヤってほどぶち込んでやるから」
「……うん」
そして欲求不満を押し込めて素直にこくりと首を縦に振るフェイタンを抱きすくめ、胸元に手を這わせながら頬にキスを落とす。背中一面にフィンクスの温もりがじわりと広がる。その感覚に興奮を覚え、我慢できず股間に手を伸ばすも彼に腕を掴まれ阻まれてしまう。振り払おうとするが、握力でフィンクスに敵うわけがない。
「今日はこれくらいにしとこうぜ」
「…………」
無言でふてくされるフェイタンの頬にキスを落とし、そのまま首筋へ唇を滑らせて、再びうなじを強く吸う。チリッとした痛みと共に新たな赤い花が咲く。
それでは飽きたらないらしく反対側にも噛みついて所有印を増やし、更には肩、背中にも痕を残す。痛覚と快感を同時に与えられ、そのえもいわれぬ感覚に翻弄される。
「フィンクスぅ……エ(ッ)チしたいよ」
「明日になったら。分からん奴だな」
駄々っ子をあやすような口ぶりで返されて、軽く唸りながら諦めたように脱力するフェイタン。
フィンクスはフェイタンを解放すると、その背中を宥めるようポンと叩いて、さっさと服を身に着け始めた。そのさまを横目で見つめながら、フェイタンも服を着込み始める。
お預けを食らった身体はまだ疼いている。勃起は治まらないし後ろの穴はむずむずして落ち着かない。
(何でもいいからぶち込まれたい……)
心の中のぼやきは切なげに溜息に変わる。
「あー、早く明日になんねぇかな」
同じことを考えていたらしいフィンクスが顔を見せないままぽつりと呟く。
フェイタンは(そんなにヤりたいならもう解禁でいいじゃないか)と言いたいのをぐっと堪えて、「ね」と軽く相槌を打つに留めることにした。



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