曲線、どうか証明であれ
今日、ガイラルディアが外出するらしい。
なんでもキムラスカから知人が訪れるとかで、迎えに行くだの何だの。
と、いうわけで。
ダメ元で訊いてみることにしたわけだ。
何を?愚問だな。
勿論、外出の付き添い(という名の執務室脱出)だ!
「ガイラルディア」
「何です?」
「お前、今日外に出るらし」
「ダメですからね」
書類の山を俺の前に置きつつ(これで机の山は二つになった)、ガイラルディアはため息をついた。何故わかった。まだ何も言ってやしないのに。
いや、なんとなく却下されるだろうとは思ったがな!
「……誰からの情報ですか」
「メイドたち」
「陛下の耳に入れないようにってあれほど頼んだのに…ッ」
「おっと、誤解してやるな。彼女たちの井戸端会議を立ち聞きさせてもらった」
「………ちっ」
ちっ、て。ちっ、てお前。
「ぶれいものー陛下の御前であるぞー」
「…失礼致しました。陛下の考えていらっしゃるであろうことが、私どもにとってあまりに不都合な内容なので、つい」
「お前ジェイドに似てきたな…なんと言うか、ご愁傷様」
「誰のせいですか…!」
「なにぃ!俺のせいでジェイドみたいになったってか!」
冗談じゃないぞ!
あいつは俺と知り合う前からあんなだった。
つまり、あいつの性格の悪さと俺は一切!関係ないというわけだ。
うん、そうに違いないっ。
「陛下が真面目に仕事さえしてくだされば、俺はこんな卑屈なこと言わなくてすむんですよっ」
「かちーん…違うな、お前がジェイドなんかに感化されるのが悪い!旅の間にジェイド菌がついたんじゃねーの」
「菌って…あんた子供か!」
「はーい二人とも、ストーップ」
大脱出計画執行中に最も聞きたくない声が耳に飛び込んでくる。
ご丁寧に語尾にはハート付きだ(気持ち悪いぞ!)
「嬉しいですねえ…二人して私の話をしてらしたんですか、へーいか」
…うお。
この感じは…バレてる。
脱走計画バレてるぞ…!?
「会話が外にだだ漏れでしたよ〜、もう少しボリュームを考えてはどうですか。もう遅いですけど」
「く…くそー、ガイラルディア!お前のせいでバレちまったじゃねーか」
「何で俺のせいになるんですか……ジェイドの旦那も何か言ってくれよ」
「そうですねえ…」
表情は穏やかだが、頭の中じゃ酷い言葉をつらつらと並べているのだろうジェイドに、睨みをきかす。
お前の嫌味に負けてたまるか!
「別に、いいのではないですか」
「「…………は?」」
「そんなに縛りつけては陛下が可哀想ですよ、ガイ」
おお…?
「だ、だけど旦那!」
「時には存分に、羽を伸ばしてさしあげては?」
「それも、そうだが…」
おおおお!
「ジェイドー!お前…やっぱり俺の幼なじみなだけあるな!」
「それはどうも」
嬉しくもなさそうに、にこり。
まあいい、その胡散臭い笑顔も素直に受け止めてやろう…今だけな。
「よーし早速行くぞ!ガイラルディア、準備しろ!」
「…納得できねえ…」
もうガイラルディアがなんと言おうと関係ない。
いくら不満をもらしたところで、あのジェイドの許可が出たんだからな!怖いものはない!
さあ、しゅっぱ――
「ああ、一つ言い忘れていました」
「何だよ、お前も行きたいってか?」
「いいえ」
キッパリと言い放ち、俺の素晴らしい幼なじみであるジェイドは、俺の机を指さした。
「あの山、お帰りになる頃には倍以上になるでしょうね」
「え」
「それ程仕事がたまっているということです。今日 存 分 に 楽しまれるわけですし、文句はありませんよねえ」
「いやいや…限度ってもんが」
「ガイ、陛下を頼みましたよ」
「……仕方ないな、了解」
「お願いします」
「ちょ、ジェ」
「では、」
いってらっしゃい。
その笑みは、今まで見てきた中でも極上の悪どさに満ち溢れていた。
曲線、どうか証明であれ
「こ、これって愛情の裏返しか?ツンデレってやつか…?」
「ええきっと(…どうだろう)」
相互御礼として部子さまに書いて頂いちゃいました!
相変わらずの騒々しさに思わずときめきを感じる、私←
そして思わせ振りな態度で相手を舞い上げさせておいて次の瞬間、地獄にたたき落とす…なんて鬼畜眼鏡の本性が見えた瞬間です。感動です。流石部子さん。(何かおかしい?
この度は素敵な御礼文ありがとうございました!
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