失色子守唄



ルチル、俺はお前に永遠を誓おう。
だから、俺と永遠に眠ってはくれないだろうか。


「なぁ、ルチル…お前は俺が好きか?」

「サイ、ラス…」

「ルチル、俺はお前に永遠を誓おう。だから、俺と永遠に眠ろう…?」


理性とかいうものは、いつだって俺の邪魔をする。




「お前はいつも忙しそうだな」

「うん、ちょっとね。ジェイド様のお手伝いだし…でも、その分やり甲斐はあるから」

「それは顔を見ていれば分かる。ほら、鼻にクリームが付いてるぞ」

「…ん、くすぐった、ぃ…え?」


にんまりと花が綻んだ顔をしながらクリームパフェを頬張るルチルの鼻頭に付着したクリームをぺろりと舌先で器用に舐め取ったサイラスに何やってんだ、お前はという疑問の目を向けられる。


「本音を言えばいっそお前ごと食ってしまいたい」

「き、近親相姦はきっと法律違反だって…!」

「違法を問われた時はダアトにでも来れば良い。ルチルなら皆歓迎してくれる」

「いやでも駄目だよ!わたしにはジェイド様がいるし、その…おお婿様もいる、から…」

「冗談だ、そんなに本気になるな」


ぽんぽんと子供にするような手つきで頭を叩く。冗談だと笑みを浮かべるサイラスの顔はいつもと同じく自分に向けられるものだ。
しかし、ほんの一瞬だけその顔に陰りが見えたのは気のせいだったのだろうか。


「…外に迎えが来ているぞ」

「え、…あっ!ジェイド様に頼まれたお仕事まだやってない!大変ちょっとサイラス行って来る!ごめんねっ」

「また次会う時にゆっくりすれば良いさ」


何度も謝り、慌ただしく出て行ってはジェイドに叱られているルチルを窓から眺め、ふ、と笑った。


お前の周りにはいつも誰かしら人がいる。それはルチルの性格故だってのも知っている。だが、邪魔なんだよ。お前を取り巻く人間共が。


――なあ、ルチル。お前はどうしたら俺だけのものになってくれるんだろうな?

もういっそ、周りの人間全てを殺してやろうか。それでお前が俺のものになるのなら、俺は喜んで罪を犯そう。

それで本当に、叶うなら。なあ、ルチル…――




気付いたら、頭の中が真っ白になって赤に囲まれたその中心に立っていた。
足元に転がるはついさっきまで仲間だった色の無い骸。


「…出て来いよルチル。そこにいるんだろ?」

「何で、サイラス…!?何で皆を、」

「邪魔でしかないんだよ、お前以外の人間なんて」

「だからって…だからって何も殺す必要は無いよ!」


フッ、と笑みを浮かべ、ゆっくりと一歩一歩踏みしめるように物陰から出て来たルチルに近寄る。
それに合わせて肩を上下に震わせ、彼女が近付く度に後ろへ下がっていく。


「このまま、お前を食ってしまいたい」

「あれは、冗談だって…」

「冗談、で済ますつもりだった。だがな、お前のせいでそうも言ってられなくなってな」

「わたしの、せい?」

「そう。お前のせい」


ルチルの首に手が掛かる。
その余りの冷たさに今ここにいる彼女は偽物なのではないだろうかと疑問を持ってしまう。むしろ人間ではないような錯覚さえ覚えた。


「サイラス…変だよ…」

「ルチル、このまま俺と一緒に眠りについてしまおう。そうすれば俺もお前もこれ以上大切なものを失わずに済むんだから」

「本当に、サイラス?」

「なぁ、ルチル…お前は俺が好きか?」


ルチルの猜疑を気に留めず自分の言葉を重ねる。
そしてそれは彼女の疑問に疑問を上書きするものだった。


「サイ、ラス…」

「ルチル、俺はお前に永遠を誓おう。だから、俺と永遠に眠ろう…?」

「ぅぐっ、…やっ…サイラス…」

「何よりも愛してる。永遠に、な」


理性を壊して狂宴の最果てへ。
全ての答えは色を失くした彼女の中に。


End.
11/02/10
▽後書き
え、えー…と、ごめんなさい(土下座
お祝いものなのにヤンデレとかすすすいませんっ。手が勝手に!と言い訳だけは一丁前にしておきます。お婿様発言もすみませんorz
私にサイルチを書かせるとサイラスがヤンデレ化する現象が確認されました;;
あと例として挙げられた某CPも良ければ書かせて下さい。血飲みは微妙な所ですが、血みどろにはなりそうです(何

とにかくっ、針水晶さまこの度は三周年おめでとうございます!
無理せずにこれからも運営等頑張って下さいませ。陰ながら応援させて頂きます!


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