「暇そうね、ピオニー」
「暇そうじゃない暇なんだよ、リオ」
イフリートリデーカン。
そりゃもう暑い時期な訳ですよ。1年間は13ヶ月、その13ヶ月の中で最も暑いと言っても過言じゃない。そして今日はイフリートリデーカン半ばときた。これほどの猛暑は他に無い!………はずだ。
「…いくら推測でも最後のは要らんだろ」
「…そこ突っ込まないでよ、これでも冒頭の重要な回想的部分なんだから」
「リオが突っ込んでほしそうな顔してたから突っ込んでやっただけだ」
「………」
急に黙りこくったリオに宙を彷徨っていた視線を向けると、眉間に皺を寄せて深刻そうな顔をしながら顎に指を添えて何やら考え込んでいる。
「明日は槍が降るな」
眼前で手を振ったり、手を鳴らしてみても反応が無いので言葉で茶化してみた。するとリオは予想外にもすんなり反応した。
「いやね、ピオニーが突っ込むとか言ったらナニにナニを突っ込むシーンがぱっと瞬間的に浮かんだの」
「………」
今度は立場逆転し、ピオニーが黙る。いやこの場合は言葉を失うと言った方が正しいか。
そして暫くして漸く我に返り、大声で一言。
「深刻そうな顔してんな卑猥なこと考えんな!」
「いえす、うぃー、きゃーん」
物凄い剣幕に気圧されて思わず異国の言葉を口にする。ピオニーにはそれが耳に入っていないのか、それとも耳に入れてないのか定かではない。がとりあえず無視された側であるリオにしてみれば多少なりとも拗ねたくなる。
「ちょっとしたジョークよ、ジョーク」
「…ジョークにも程があんだろ。今此処にジェイドが居てみろ、お前の頭上に雷が落ちるぞ」
「その辺は運の良い私に感謝だね」
「何で俺がお前に感謝せにゃならんのだ」
えー、それはねー、と言いかけて返って来なくなった台詞に大きな溜息を吐き、横にいて今尚えーと唸っているリオの頭を撫でた。
そしてふと思い付いた。
「よし、花火を見に行こうぜ」
「ハ?乳を見に行こうぜ?嫌だよ、私そこまで変態じゃないもん」
「は・な・び!花火だ!どうせお前も暇なんだろ、付き合え」
「いやーん、ピオニーったら積極的、とか言っておくべき?」
「言っておかないべき。もう遅いがな」
様子のおかしいリオを連れて行くのは大いに不安だが、一人で花火を見るのは趣に欠けるのでとりあえずリオの手を引いて隠し通路を抜けていく。
長い長い通路から這い出た時、既に空は深碧に染まり良い雰囲気を醸し出していた。
「お、時間帯的に丁度いいな」
「あ、」
リオが何かを見つけたと言わんばかりに声を上げる。
「笑いは要らんからな」
「違うよ。ほら、流れ星」
暗青色に白色の閃光が一筋二筋と続けざまに流れていく。それはまるで星のシャワーのように。
「見事なもんだな…」
「ピオニーならなんて願う?」
「そうだな…あ、アレ見てみろよ」
河原から直線を描き、色とりどりの大輪の花が咲く。
「綺麗ねー」
「…ああ」
頭をリオの膝に乗せ、体を地べたに投げ出して次から次へと咲いては散る花へと視線を合わせた。
「…ピオニー?」
「少しの間でいい、膝を貸してくれ」
「残念ながら膝は貸せませんよ」
「一々聞いた俺が馬鹿だった」
ロマンチックな雰囲気をぶち壊すな、馬鹿と膝枕したままべしべしと頭を叩く。リオも負けじと叩き返す。
叩き合いが一段落すると二人はけたけたと笑い合った。
そしてそれも終わった後、静かに花と閃光を見上げるのだ。
今ある幸せが永遠に続けばいい。
(そう願うのは我が儘だろうか)
END.
▽後書き
ウパラでほんわかということで、あおい様、如何だったでしょうか。
………ほ、ほんわかどころかギャグ路線を突っ走ってしまったような気がしてならないんですが;(死
苦情や書き直し要請は遠慮なくぶつけてやって結構でございます。
この度は相互リンクして下さってありがとうございました!
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