図書委員財前

放課後、頬杖つきながら広くはない図書室を見渡す。まばらにしか人がおらん。ちゃっちゃと終わらせて早く部活に行きたいんやけど。
いつもは部活の休みの日に委員の仕事がくるように調整してもらってるけど、今週はなんとも上手くいかず部活とかぶってしまった。

「あ!おった財前」

この場所にふさわしくない無遠慮に扉を開ける音と大声が響いた。露骨に嫌な顔を向けるとそこには笑顔の華子さんが立っていた。

「財前もう部活始まってんで!はよ来んと!」
「今日は委員やから遅れるて連絡したと思うんですけど」
「え?嘘やん!あたし見てへんで!」
「嘘ちゃいます。てかうるさいんで出ていってもらってええですか」

再度、図書室を見渡すとじろりとこちらを睨んで来た生徒が何人か。彼らの視線を気にすることなく華子さんはケータイを操作しながらぶつくさ言ってる。

「ほんまや〜ライン来とったん気づかんかったわ。ごめんな財前」
「いや、ええんで早く出てってください」
「それはそうとあたし図書室初めて来たわ。思ってたより広いねんな」
「華子さん俺の声聞こえてます?」
「あー漫画もあるやん!ブラックジャック読もー」

華子さんは勝手にカウンターに入ってきて俺の隣に座って漫画を読みだした。
とりあえず静かになったので、もうほっとくことにする。ふむふむと百面相しながらブラックジャックを読む華子さんは黙っていればそこそこ可愛いのに、と思う。
しかし、大口開けてギャハギャハ笑うところとか、大股開けて座るとことろとか、その際スカートの下からチラチラ見える小豆色のジャージとか、接すれば接するほど残念さが滲み出してくる。

「ブラックジャックサイコーかよ〜手塚治虫先生サイコーかよ〜」
「華子さん読み終わったんならはよ部活戻った方がええんちゃいます。」
「え?なん「くぉら華子ー!!!」

再びこの場所にふさわしくない大きな音が響いた。扉が開いた向こうに立っていたのはユニフォームを着た白石部長だった。

「あれ、え、白石?どうしたん?」
「どうした、ちゃうわ!お前は何しにここに来たんや」
「ん?ん〜?ブラックジャックを読みに…?」
「ちゃうわ!財前を迎えに来たんやろが」
「あ」
「ほんまに忘れとったんかい!」

みなさん、うるさくして失礼しました。
と、頭を下げて出ていく白石部長に対して先ほどこちらを睨んでいていた生徒は笑顔で手を横に振っている。ここにも白石部長の人望の厚さが見て取れる。

「ちゃうやん。そもそも部活に来んかった財前が悪いんであって…」
「今日は遅れるて連絡来とったわ。華子のサボりの口実に使っただけやろ」
「ちゃうちゃう!ほんまにあたしそれ知らんかって」
「ハイハイ、言い訳は後で聞くから」
「ああああああ〜白石堪忍して」

華子さんは口パクで「後で覚えときや」とこっちを睨みながら白石部長に引きずられて行った。

あー今日の部活行くのダルなってきたなあ。