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1月25日(月)
1回目の戦闘を終えての待機期間。潜伏している家はボロボロで寝心地が悪い。彼らとも少しずつ打ち解けてきていると思う。
初陣でソコソコの活躍をした私を見て、今まで私の戦闘への参加に対し否定的であった者も納得したようだ。


「奈津」
「なに、晋助」
「おい、軽々しく俺の名前を呼ぶんじゃねぇよ」
「あんたなんか晋助で十分でしょ。イチイチつっかかってくんじゃないよ、晋ちゃんはうるさいでちゅねえ〜」
「てめぇ、マジで今度ばかりは斬る。本気で斬る」
「出来るものならやってみて〜」

べーっと舌を出しながら駆け出した奈津を高杉は追いかける。あれは相当キレてんな。ドタバタと2人が駆け回るこの館は決して広くない。奈津が捕まり、ボコボコにされるのはそう遠くない未来だろう。ここにいる全員がそう予想したであろう。しかし、なかなかどうして奈津はなかなか捕まらない。その時、戦場で駆け抜ける奈津の姿を思い出した。

「ヅラ、あいつどこで拾ってきやがった」
「ヅラじゃない。桂だ」
「もうそれいいから。あいつ、ただ者じゃねぇ。なにもんだ?」
「…俺が敵情報を探るため、諜報に行った時があっただろう」
「奈津を連れてきた時か」
「ああ。あの時、他の班の者とも合流してな。情報の受け渡しをしていたんだ。」

その後のヅラの話を要約するとこうだ。その際、敵に勘付かれ、奇襲をかけられた。それにより、他の班の仲間は全滅。ヅラも追い詰められ、死をも覚悟した時に彼女は登場した。奇襲をかけてきた敵のさらに背後から現れ、ヅラの窮地を救ったと。

「全滅した班の一員だったらしい。班がなくなったため、俺らの方に入れて欲しい、と」
「ふぅん…あっちの班に女なんぞいたのかねぇ。聞いたことねぇが」
「あの班は諜報活動が主だったからな。噂が出回っていなくても無理はない」

高杉にマウントポジションを取られ、殴られかけている奈津を見る。しかし、高杉の背中を蹴り、体勢を崩させると高杉を払いのけまた逃げ出す。なんというか、力をいなすのが上手いのか。

「ああ〜もうあんたたち、やめなさい!」

パンパンと手を叩きながら謎のお母さんキャラでやつらの小競り合いを止めにヅラは離れて行った。

「………」

腑に落ちない点はあったが、輪の中心で笑う奈津を見るとどうでもよくなった。なんやかんやで名前で呼ぶことを承認した高杉や、彼女のファイティングスピリットを讃えるやつらの顔を見る限り、いよいよ奈津は俺らの仲間に正式に迎え入れられたらしい。


140810