4ページ

1月20日(水)
ここに来て初めて本格的な戦闘に参加。周りを見ながら戦うのは大変難しい。
高杉は激情突進型。坂田は型にはまらず捉えにくい動きをする。桂は冷静で局面をよく見ている、動きが早い。坂本は後方支援が多い、あまり戦闘には積極的ではないか。


カンカンカンーーーーー

鐘が鳴り響いた。一斉に志士たちが走り始める。戦闘開始の合図である。
前方から襲いかかってくる天人たちを刀で斬りつける。何度経験しても慣れないこの感触。

「銀時、後ろだ!」

ヅラの声が響いた。振り返る間も無く斬られた、そう思った瞬間目の前に散ったのは自分のものではない赤い血しぶきだった。

「坂田さ〜ん、後ろガラ空きですけど」
「いや、分かってたけどね。初陣の君に譲ってあげたのよ」
「あのねぇ、素直にお礼は言えないんですか?ありがとうとごめんなさいが言えない男はモテません、よっ」

減らず口と共に彼女は先陣切って走って行った。他の志士と比べ、一回りも二回りも体の小さな彼女は格好の的だったに違いない。しかし、前方からくる敵を軽くいなしていく。自分が非力だからと分かってか、人よりも素早く一直線に相手の急所を狙っていく。この戦場において彼女の存在はかなり異質だった。しかし、それとは反して戦場にいるべくして存在しているようにも思えた。それほど彼女の戦い方は美しかった。一切の無駄がない。

「なにボサッとしてるんですか!一気に畳み掛けますよ!」
「なに仕切ってんだテメェ!俺のが先に行く!」

颯爽と走っていく奈津に遅れまいと後を追う高杉。その後ろを笑いながら辰馬とヅラが駆けて行った。

「こりゃ想像以上じゃ。シビれるのぉ〜」
「銀時、大丈夫か?ならこのまま行くぞ!」

俺もすぐに我に返り、やつらの後を追う。戦場では一瞬の気の緩みが命取りだ。ぼけっとしている暇はない。
結果として殿をつとめることとなった俺は奈津の戦いぶりをこの後あまり見ることはなく、その日の戦いを終えた。


100429