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7月15日(木)
暑い。本格的な戦争に突入して約2ヶ月。野営生活にも慣れてきた。けど風呂に入れないのがつらい。
しばらくはまだここでの生活が続くようだ。


喧嘩っぱやい奈津は普段は最前線に立っていることが多い。最初は同じ場所にいても気づけば奈津の姿を見失っていることがほとんどだ。しかし、この日は違った。やはり一度はいつも通り見失ったものの、ふとあたりを見回すと奈津の姿があった。敵と刃を交えており、激しい鍔迫り合いをしている。救援に向かおうと近づいたところで、ふと違和感を覚え、動きを止める。

「(会話してんのか…?)」

奈津と競り合っている男が何か話しているような気がした。交互に口が動いている。なにも敵同士会話をすることが珍しいことではない。二言三言、お互いを罵る言葉を浴びせる時もある。ただ、これはそういうのではない気がした。それにしては2人とも落ち着きすぎている。

キィンーーーー

お互いが刀を弾き合い、奈津と男には間合いができた。顔を見合わせながら、じりじりと間合いが開いていく。ある程度離れたあと、男は踵を返し、去っていった。その後ろ姿を奈津はじっと見つめていた。

「銀時!後ろだ!」

背後からかかったヅラの声に硬直していた体が動く。とっさに振り返り、背後に近づいていた敵を斬った。赤い血しぶきが舞う。

「ボサッとしている暇はないぞ!銀時!」

ヅラが通り過ぎ様に言った。それに生返事をして、奈津に視線を戻す。彼女もヅラの声を聞いて俺の存在に気づいたらしい。奈津はまっすぐに俺の方を見ていた。その表情からは感情が読み取れない。

「銀ちゃん」
「奈津、」
「いたなら加勢してよ!さっきのやつ倒せたかもしれないのに」

口を尖らせながら俺を非難した奈津はいつもの奈津だった。ぷりぷりと怒りながら俺に近づいてくる。

「ちょっと、きいてる?」
「あ、ああ…悪りぃ悪りぃ」
「しっかりしてよ〜もう!ほら、いくよ!」

刀の血を払って奈津は駆け出して行った。幾度となく見失った奈津の背中を追いかけながら問いかける。
なあ、奈津。俺らはお前のこと、信じていいんだよな?


170515