なんて、つまらないんだ。目の前には書類の山、山、山。自分の背ほどもあろうかというそれを見つめて愕然とした。
窓の外には遠くに提灯の灯が並んでいるのが見えた。祭りをやっているらしい。こんなつまらないことは放っといて抜け出してしまおうか。うん、そうしよう。
窓枠に手をかけて身を乗り出した。と、同時に背後から制止の声がかかった。

「どこ行くんですか!団長!」

扉を思いっきり吹っ飛ばして入って来たのは、いつも見慣れたうるさいヤツ。あーあ、また扉壊れちゃった。

「仕事片付けるまでダメって言ったじゃないですか!」
「別にいいじゃない。減るもんじゃないし」
「ええ、むしろその逆です。だから怒ってるんです。ついでに言うとあたしと阿伏兎さんの辛労も増えてるんです」
「ふーん」
「なに他人事みたいに言ってんですか。あんたのことだよ」
「誰に向かって口きいてんの?」
「ぎゃああいいいたいいたいいたい!ギブギブ!」

思いっきり頬を引っ張ったら本気で痛そうに腕を叩いてきたから離してやった。赤くなったそこをさすりながら、涙がたまった目で睨んできたけど正直全然怖くない。

「団長、お願いですから仕事してください」
「しつこいなぁ。もっとつねられたいの」
「なんでそうなるんですか。だいたい団長は・・・・・・あ」

窓の外を見て固まった部下に倣って俺も視線を外にやる。と、同時に独特の破裂音とともに空に大きな花が咲いた。

「花火だ」
「・・そういえば、今日は祭りがあるって町の人が言ってました」
「・・・ふーん。俺、初めて見るよ」

ドォンと空に華々しく散るそれから視線をずらして彼女を見るとと少し迷った顔をして「仕方ないなぁ」と呟いた。

「1時間だけなら行ってきてもいいです。ただし絶対問題起こしちゃダメですよ」
「うん、分かったヨ」
「返事だけはいつもいいんですよ。返事だけは」

形だけの了承に気付いてるくせになんだかんだ言っていつも折れるのはそっちなんだから。つくづくあんたって俺に甘いよね。

「あなたの我が儘に振り回されるこっちの身にもなってくださいよ」

ブツブツ文句を言ってるそいつに「あとはよろしく〜」と声をかけて部屋から出ていく。
口ではそんなこと言ってるけどさ、結構あんたも満更じゃないって顔してるよね。

090529