数え切れないほどのキスで
髪を振り乱しながら甘い啼き声と共に紡がれた自分の名前に、ルイは満足気に微笑むと、アンの顔の両脇に肘をついて頬に触れた。
「本当に………愛してる」
そしてアンの甘い声ごと飲み込むように深く唇を重ね、律動は速度を増して淫靡な水音が一層激しく部屋に響き渡る。
ルイの背中に回されたアンの手は、爪痕が残りそうなほどにぎゅうっと強くしがみついて――。
お互いがお互いを強く求め合って、そして二人は快楽の高みを見た…―。
◆ ◆ ◆
ざわざわ…
ざわざわ……
その夜。
煌めくシャンデリアの下、たくさんの人で溢れ返ったダンスホール。
誰もが直接お祝いの言葉を贈ろうと、ルイを取り囲んでいる。
少し離れた場所から、人だかりの中央にいるルイをちらりと見遣ると、その表情はいつもと同じで特に嬉しそうな素振りは見せていない。
そんなルイに、アンはクスッと小さく笑みをこぼすと、その瞬間ルイの耳元に光るピアスに気づいた。
それは、今朝、ルイの部屋を出る間際に渡した、バースデープレゼント。
「あ……」
「どーしたの、アン」
背後から掛けられた声にびくっと肩を揺らして振り返ると、そこには2つのシャンパングラスを手にしたノアがいた。
ノアはにっこり笑うと、さりげない仕草でアンにそのグラスのひとつを手渡す。
「ルイ、私が贈ったピアスつけてくれてるから嬉しくて」
「あ、ほんとだ。いつもと違う。綺麗な青だねー。シャルみたい」
「…!」
「ん?」
「…ううん、ノアが鋭いからびっくりしただけ。あのピアス、シャルの青と同じだなと思って選んだから」
ノアは微笑んでアンの話に耳を傾ける。
「幸せの青い鳥ってよく言うけど…私にとっては、ルイの存在がたくさんの幸せをくれるんだ。だから、ルイに伝えたかったの。私にとっての幸せがルイだってこと」
ノアは嬉しそうに頷いて、アンに目で合図する。
アンが促された先へ視線をやると、こちらを見ているルイと目が合った。
ルイはそっと自分の耳に触れ、淡く微笑む。
誕生日である今日この日に、ルイが笑ってくれている。
ただそれだけで、信じられないくらい幸せを感じる。
アンは、抱えきれないほどの幸福感と、いくら伝えても伝えても溢れ続ける愛に満たされた胸を、きゅっと掴んだ。
ありがとう、ルイ。
産まれてきてくれて。
私と出逢ってくれて。
愛することも、愛されることも、許してくれて。
ありがとう、ルイ。
そして心から、おめでとう。
「………愛してるよ」
呟いた声こそ今は届かなかったが、ルイはアンの唇の動きで悟ったのか、恥ずかしそうに目を伏せた。
伏せられた金色の睫毛は、間近で見るのと同じように光を反射してキラキラ輝いているのがわかって、不意に今朝がた何度も何度も交わしたキスを思い出した…―。
-END-
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