ひと夏のマーメイド

 



「…ルイっ…!こんな…、ダメ…っ」







「気持ちいいよ…アン。ちゃんと、掴まってて」







「あっ、あっ…!」









ルイの両手が食い込むほど強くアンのお尻を掴んで、自分の腰に押し付ける。

アンは堪えられないというように、悲鳴のような、だけど甘い声を吐き続ける。










「っ…あー…、アン…!」








「っああ、…っ!ダメ、ダメぇ…ルイ…っ!」











ルイの熱い迸りが、アンを襲う。

そして二人は一際大きく波立たせて、白い世界に包まれていった。






















   ◆  ◆  ◆



















「あれ、ルイ。…に、アンちゃん。こんな時間までどこ行ってたの?」








辺りがすっかり暗くなってから城に戻ると、廊下でばったりとレオに鉢合わせた。









「う、海だよ。今日会った時に言ったでしょ?」







「へえ…こんな時間まで、遊んでたの?ルイ、顔に砂ついてるよ」









レオがルイの頬を指差す。

ルイはいつもの通りポーカーフェイスで、何事もないように指で砂を払った。



今日の日中、出掛ける前レオに会った時に、ルイと二人で海に行くことを話していたアンは、探るようなレオの言葉にどぎまぎしてしまい、足早に去ろうとする。








「じ、じゃあ、レオ。またね」







「あ、アンちゃん」







「っ…はい」








アンは思わず背筋を正して振り返る。









「あの海、人魚姫と王子様が出るんだって。陽が沈みかけた頃に」










「…へ?」









「それで、愛を確かめ合うんだって。その二人を見れた人は、幸せになれるらしいよ」











レオが笑顔で続ける。












「俺、実は今日見れたんだよね。幸せになれるかなー。楽しみ楽しみ」










「……え……っ……!?」












沸騰しそうなほど真っ赤になって慌てふためくアンに、隣で笑いを堪えるルイ。





その噂を流したのが、実はレオ本人だったことを、アンは後日知ることになるのだった。









-END-


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