※社会人&同棲中



「だから、しょうがないじゃん!」


「お前が無防備過ぎるんや!」


「そんなこと言ったってさ、あたしだって最初から二人きりだって知ってたら行ってないもん!」


「それでも途中で気付いたら帰ればよかったやろ!」


「あたしもそうしたかったけど先輩だし、仕事でお世話になってるし、あまり邪険にはできないよ。」


「そもそも名前が俺たちのことみんなに内緒にしときたいとか言うからこんなことになったんやろ?」


「だって気まずいじゃん。色々気を使われたくないし。」


「秘密にしとる理由ってほんまにそれだけか?あわよくばとか考えてとるんやないやろな?」


「そんなわけないじゃん!何言ってんの!」


何でこんなことになったかと言うと、先輩(もちろん男)に同じ部署の何人かと夜、食事に行くから名字さんも来ないかと誘われ、付いていったら先輩と二人きりだったという。まんまと騙されたわけですよ。すぐに帰ればよかったとあたしも思うけど入社した時から色々助けてもらってるから食事だけして後はさらっと流せばいいか。なんて考えで食事してたんだけど、もちろん先輩はあたしが謙也と付き合っていることを知らないからぐいぐい来るわけですよ。好きだああだこうだって。もともと熱血!って言葉がぴったりの人だからこっちに断る隙を与えてくれない。そうしてたらなぜか目の前に謙也がいて、あたしは腕を掴まれそのまま家に連れて帰られて今に至るわけですよ。どうやらあたしが居た店に謙也の友達がいて謙也に連絡が行ったらしい。その友達がどんな伝達をしたのか知らないけどあたしが浮気してるって勘違いしたらしくてあわてて店に来たらしい。その誤解は家に帰る途中で解けたけど謙也の怒りは収まらず冒頭のやり取りになるわけです。



「…もういい。謙也のバカ!あたし出て行く。」


「なっ!何で出て行くんや!」


「だって謙也が何言ってもあたしのこと信じてくれないんだもん!ちょっと距離をおいた方がいいよ。だから。」


「やからって。なんも出て行くことないやろ!」


「しょうがないじゃん。一緒に住んでるんだから。じゃあね。」


「っ、じゃあ俺が出て行く!」


「は?いいよ。あたしが出て行くよ!」


「いや、俺が出て行く!」


「もう!なんで?あたしが出て行くって言ってるじゃん!じゃあね!」


「ま、待てや!」


謙也があたしの腕を掴んだ。またか。


「何よ。離してよ。」


「また変な奴に言い寄られたらどうするんや!お前アホやからまたふらふら付いていくやろ!」


「行かんわ!あんたどんたけあたしのことバカだと思ってんのよ。」


「それにお前行く所ないやろ?」


「あるわ。たくさんあるわ。友達の所とか、というかあたし地元こっちだからね?実家だってあるわ。行く所ないのは謙也の方でしょ?」


「俺だってあるわ。大学の友達とか。従兄弟だっておるし。」


「あー、従兄弟ってあの?」


「そうや。まあ別にサウナでもホテルでもええやんか。それは。」


「まあね。…というか何の話だっけ?」


「俺が出て行くって話や。」


「そうだった。嫌だ、あたしが出て行く!」


「まだ言うんか。せやから「はいはいわかったわかった。もういいよ。もう面倒だからこうしよう。どっちも出て行くか、どっちも出て行かない!どうする?」


「…じゃあ、後者で。」


「あたしもそれがいいと思います。」


「はい。」


「うん。じゃあそろそろ腕を離していただけますか?」


「あぁ、ごめん。」


「こんなに腕掴まれてたこと初めてだよ。」


「ですよね。」


「あのね、またこういうことで揉めたくないから言っておくけど。あたしは謙也のことが世界で一番好きだし、大切だし、ずっと一緒に居たい。だから信じて。」


「…うん。ごめん。俺が悪かった。」


「わかればよろしい!」


「俺も名前が世界で一番好きやし、大切やし、ずっと一緒に居りたい。」


「知ってるー。」


「うわ、なんかむかつくわ。」


「こっちがむかつくわ。人の気も知らないで。あんな酷いこと言って。」


「ほんますまんて。反省してます。」


「ならいいよ。それにしても、あたしが出て行くって言った時の謙也の顔、ひきつってたなー。」


「そりゃ彼女に出て行くって言われたら誰だって焦るやろ。しかもこんな時間に。」


「あたしに出て行ってほしくないから自分が出て行くって言ったんでしょ。ふふっ、可愛い。」


「可愛くはないやろ。」


「焦ってるのが目に見えてわかったから可愛いの。手汗びっしょりだったし。」


「今日はとことんカッコ悪いな。俺。」


「そんなことないよ。あたしにとってはどんな謙也も最高に格好いいよ。キャー!謙也様ステキー!抱いてー!ってね。」


「最高に格好いいの後が余計や。」


「でも本当に。好きよ。」


「お、おう。」


「ふふっ。」


「……ではお望み通り抱いて差し上げましょうか。」


「結構です。」


「遠慮なさらずに。さあ!参りましょう。」


そう言って腕を掴まれ寝室に連れて行かれる。本日3回目だ。本当に今日はよく腕を掴まれる。でも今回は抵抗しない。







20160202
「さっき世界で一番って言ったけど、ミーちゃん(実家で飼ってる猫)とかいるから保留で。」
「…そこは一番でええんちゃうかな?」
「謙也は?」
「俺は名前が世界で一番やで。」
「知ってるー。」
「うわ、むかつく。」

title:ROUTE A

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