とんだ喜劇の幕開けだ



「名前、愛してる。」

彼女は小さく、うん。と頷くと部屋を出ていった。俺は今日、彼女と禁忌を犯した。いけないことだとはわかっている。でも後悔はしてない。それなりの覚悟と責任を持って俺は行為に及んだんだ。彼女を愛しているから。それだけだ。


大学を卒業し、この学校で数学教師として働くことになった。教師になることは子供の頃からの夢だった。俺の生徒であった名字名前は初めは数学が苦手だったみたいだが俺の授業を受けるにつれ数学が好きになってくれたらしい。教師としてとても嬉しいことだ。放課後勉強を教えてほしいと度々俺を訪ねてきてくれるようになり彼女の一生懸命な姿に少しずつ心惹かれていった。勉強を教える以外にも下らない世間話をしたり、家族のことや友達とのことを相談されたりとだんだん距離が近くなっていった。そして彼女から好きだと告白され現在に至る。数学を頑張っていたのも俺に好かれるためだったと聞いてとても嬉しかった。心の底から彼女が愛しい。故に行動に移してしまった俺は一生彼女を愛し、守っていくと己に誓った。


朝、いつものように校門に立っていると彼女が登校してきた。これからは二人の関係が周りにばれないように彼女に接しなければ。他の生徒と同じように彼女に声をかける。

「おはよう。」

「おはようございます。」

そのまま彼女は俺の前を通り過ぎていった。俺はいつものように笑顔を向けていたのだが彼女は無表情だった。昨日のことがあるから緊張しているのか、周りにばれないよう気にするあまりそんな表情になってしまったのかわからないがまあ大したことではないだろう。次々に登校してくる生徒たちと挨拶を交わす。ちらっと彼女の教室を見上げると窓際の席にいる彼女が熱心に勉強していた。1限目の数学の予習でもしているのだろうか。俺が担当になってから毎回授業前に予習をするようになったらしい。彼女のそういう所が好きだ。にやついてしまうだらしない顔をなんとか抑えて生徒たちに声をかける。





title:スイミー

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