今日は生徒会の会議があるので跡部がいない。しかも天気は雨。こんな時はいつもミーティングをしているのだか、このところ雨が続いたので特に話し合う内容もない。その上部長である跡部が不在となるともうみんな暇を持て余しており各々好き勝手に過ごすしかない。マネージャーであるあたしも同じように暇を持て余していた。なので周りの奴等を観察してみることにした。
まずは長太郎、日吉、樺地の2年生組。彼らは黙々と今日出されたであろう課題をこなしていた。
(真面目だな…。そんなの適当にやっときゃいいのに。そんな若いうちから真面目にしてたらつまらない大人になっちゃうよ。3年のあたしが言ってるんだから間違いない。)
なんて何の根拠もないことを思いつつ次は宍戸と岳人とジローに目を向ける。宍戸は椅子に方膝を立ててスラムダンクを読んでいた。
お前スラダン好きだな。何回読むんだよ。でもまぁ面白いよ名作だよ。スラダンは。流川かっこいいよね。水戸もいいわぁ。あと三井も。三井と自分を重ね合わせてんのかね。にしてもスラダン以外の漫画読んでる所なんて見たことがないよ。いや前言撤回。前ドラゴンボール読んでる所を一回だけ見たことがある。それでも一回だけど。
「なんだよクソクソ!」
宍戸の漫画のレパートリーについて考えていると岳人が椅子の上で文句を言いながら跳び跳ねていた。どうやらゲームで自分が操作していたキャラが負けたらしい。にしても椅子の上で跳び跳ねるのはやめてほしい。岳人のせいで椅子の立て付けが悪くなって座るたびギシギシ音が鳴る。その都度滝に名前太った?とからかわれる。違うよ!岳人のせいだよ!と反論する。もはや決まり文句のように。でもいちいち答えるのが面倒くさくなってきて最近ではハイハイソウデスネー。と流している。しかしそのせいか近頃滝があたしを物欲しそうな目で見てくる。レギュラー落ちしてから色々寂しい思いをしているのだろう。これからはいくら面倒でも滝とコミュニケーションをとってあげよう。そう思った。
そしてまた負けたのか岳人はイライラしながらゲームを続けている。その岳人の隣でジローがスヤスヤ寝息をたてて寝ている。涎を垂らしてはいるものの天使のような寝顔に、雨のせいでジメジメとした嫌な気分だったあたしの心が癒された。
「なぁ名前。」
ジローのおかげで晴れやかな気持ちになっていたあたしに漆黒でもさもさした見るからに暑苦しい髪型の忍足が話しかけてきた。雨のせいかいつもより毛量が増している。
「なに?」
「暇やない?」
「まぁね。」
「なんかしようや。」
「なんかって何よ。」
「そやな…」
忍足はそのまま考え込んでしまった。やりたいことが見つかってから話しかけてよ。せっかくジローで癒されてたのに。
「そういえば自分髪切ったやろ。」
やることを探してると思ったら急に髪の毛についてふってきた
「切ったけど前髪を少しだけね。友達もみんな気づかなかったのによくわかったね。」
「男として女の子のそういう変化に気付けんとあかん。女の子はそういう細かい所に気付いてくれる男にキュンとするんやろ。」
「忍足って普段からそんなことばっかり考えてんの?」
「当たり前や。女の子に好かれんと男として生まれてきた意味がないやろ。」
「よくわかんない。」
「名前やって男に好かれたいやろ?だからそうやって前髪の手入れしたりするんやろ。」
いや前髪は別に男に好かれたいから切ったわけじゃなくて単に目に入って鬱陶しかったから。まぁ異性に好かれるために髪型を変えたりすることもあるだろうけど。これは違う。
「女の子好かれるために外見だけ気にしとったら周りと変わらん。重要なのは内面や。女の子がキュンとすることを日々研究してこそ本当に女の子に好かれる男なんや。」
忍足のことを好きな女の子たちの話を聞いているとクールでミステリアスで女の子に興味が無さそうな所がいい。って言ってたけどその子たちに教えてあげたい。この男は日々こんなことを考えているのだと。みんなどう思うのかしら。
「ねぇ忍足。」
「なんや。」
「内面もだいじたけどさ、忍足はまずその湿気のせいでもっさもさになった頭をどうにかした方がいいよ。」
テニスをしている時はみんなキラキラ輝いていて、強くなるために努力をし、勝つ喜びや負けた悔しさを胸に日々頑張っている。本当にあたしと同じ中学生なのか?と思うこともよくある。
でも雨が続くとだいたいみんなこんな感じ。テニスをしていない彼らはやはりあたしと同じただの男子中学生なのだ。
でも1つだけ言わせて。跡部だけは違う。あの人は雨だろうが晴れだろうがテニスをしていようがいまいが関係ない。頭がおかしい。それだけ、以上。
20140903
なんてことのない日常の話。彼らも普通の中学生。そう思います。
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