昼食終わりの授業は満腹感と眠気が邪魔をして受ける気にならないのであたしはそそくさと屋上に足を運ぶ。

「あ、不良がいる。」
「おまえさんもな。」
「あたしはただ授業サボってるだけ。煙草なんて吸わないし。」

目の前には壁にもたれ掛かって煙草をくわえている仁王がいた。その姿は高校生とは思えないほどに色っぽく少し近寄りがたい雰囲気もある。

「煙草嫌いなん?」
「嫌いかな。臭いし。」

でも仁王が吸ってるのは嫌じゃないな。やけに似合ってるから。なんて思ったけど言わない。

「仁王は進学するの?」
「いきなりやね。お前さんは?」
「多分そうする。でも将来何がやりたいかわかんないんだよね。」

仁王はそうか。と一言呟いて新しく煙草に火をつける。とても慣れた手つきについ見とれてしまう。あたしの視線に気づいて苦笑いを浮かべ煙草を地面に押し当てた。

「消さなくていいのに。」
「吸いたくなくなっただけじゃ。」
「あっそう。それにしてもいい天気だね。」
「じゃな。」

そのままただぼけっと空を見ていた。このまま身体がふわりと浮いて、どこか遠くに行ってしまいたいなんて馬鹿なこと考えてしまうほど今この空間はとても心地がよかった。

「これから先どうなるのかな。」
「それはおまえさん次第じゃろ。」
「だよね。」

ある日の昼下がりどうしようもない会話をしてぼけっとしているこの時を将来のあたしは懐かしむのかな。はたまた思い出せないほど今のあたしの悩みなんてどうでもよくなってるのかな。だとしたら今この時間に何の意味があるのだろうか。ただ将来の為に時間を潰しているだけではないのか。馬鹿げた理論だけど不透明なものに真っ直ぐぶつかって行けるほどあたしは強くない。ただの弱虫だ。だから考えれば考えるほどに今が無意味なものにしか思えなくなってくる。

「今仁王と話したことって将来絶対に思い出さないよね。」
「じゃろうな。」
「それってこの時間が無意味な気がして虚しいよね。」
「でも今の積み重ねが未来じゃろ。だとしたら今は無駄じゃないぜよ。」

まぁそうなんだけどさ。とてつもなくごもっともな意見ありがとうございます。そんなことはあたしだってわかってる。今日が無きゃ明日も来ないんだ。理解してますそれくらい。だからこそこのもどかしさにイライラしてるのだ。もうどうしたらいいんだよ。誰か教えてください。何?時間が解決してくれるって?だからその時間の過ごし方について悩んでるんだよあたしは。わかった!タイムマシーンで10年後くらいに連れて行ってくれ。そしたら全て解決よ。え、何?タイムマシーンなんて無い?知ってるよ。

「どしたん?変な顔して。」
「へ?あ、つい現実逃避しちゃってた。」
「現実から逃げようと思ってもどうせ逃げ切れんからのぅ。じゃったら俺は正面突破するぜよ。」
「仁王ってふらふら流されて生きるタイプかと思ってたけどちゃんとしてたんだね。なんか意外。」

本当に意外だわ。まぁテニスのことに関しては真面目に考えてるだろうけどそれ以外はふらふらしてて、イマイチ掴めないところも仁王の魅力の一つだったからちょっとイメージ変わったし、こんな話あんまりしなさそうだからなんか得した気分。

「名前。」
「…は、はい!何でしょう。」

いきなり名前で呼ばれたから驚いた。

「俺とこれから先一緒におるってのはどうかのぅ?」
「えっ…、それって…。」
「恋人として一緒に生きてくってのはどうじゃろ。」

頭がくらくらする。別に日差しが強いからでも日を浴びすぎたからでも況してや貧血気味だからでもない。仁王から発せられた内容があまりにも嬉しかったから脳がびっくりしてるんだと思う。キャパオーバー?オーバーヒート?確かそんなやつだ。

「さっそく正面突破してみたんじゃが。答えんとどんどん進むぜよ?」
「え、えっと…あたしも仁王と一緒に居たい、です。」

あたしの言葉を聞いて仁王は軽く笑い、緊張から解放されたのか身体の力が抜けていくのが目に見えてわかる。仁王も恋愛事には緊張するんだ、意外。また一つ新しい面を知って得した気分。今日は収穫が多いな。一方あたしはというと全身が熱を帯びて暑くてたまらない。身体もオーバーヒートしそうだ。さっきまで色々悩んでたのに今はそんなことどうでもいいわ。タイムマシーンなんていらない今がいい。

「返事がもうちょっと遅かったらキスしとったのにのぅ。残念じゃ。」





20141121
私の頭がふらふらしてるな。
そして仁王さん難しい。喋り方謎過ぎて。

title:さよならシャンソン

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