「失礼します。」
「やぁ名前。いらっしゃい。」
「身体はどう?」
「大丈夫。落ち着いてるよ。」
「そっか、よかった。」
テニス部のマネージャーである名前は休日や部活が休みの日にはこうして病室を訪ねて来てくれる。
「昨日ね、ブン太が噛んでたガムがくしゃみした時に飛んじゃって、ちょうどジャッカルの頭にくっついたんだよ。みんなで大爆笑しちゃった。」
「それは面白いね。」
「髪の毛無くてよかったってジャッカルが言ってた。確かに髪の毛あったら取るの大変だよね。」
「そうだね。」
「さすがの真田も笑ってたよ。」
「そうなんだ。俺も見たかったな。」
「写真撮ればよかったね。そしたら幸村にも見せてあげられたのに。」
「次は写真撮ってきてよ。」
「なかなか無いと思うけど、また何か面白いことが起こったら写真撮ってくるよ。」
「うん。楽しみにしてる。」
いつも名前はこうやって部活の話をしてくれる。それが日々の楽しみで辛い治療にも耐えられている。俺にとって彼女の存在はとても大きい。
「名前の話を聞いていると自分もその場にいるような気になるよ。」
「ほんと?じゃああたしと半分こだね。」
「半分こ?」
「うん。思い出を半分こ。」
「思い出を半分こか。いいね。」
「でしょ。だから幸村が寂しくならないようにこれからもたくさん話に来るね。」
「ありがとう。待ってるよ。」
「みんなも連れてくるね。」
「うん。」
名前が居てくれてよかった。少しでも早く病気を治して名前たちと一緒に部活がしたい。名前が話してくれる思い出の中じゃなく、本当に同じ場所にいられるように。みんなと同じ景色を見られるように。
20141028
1人で病室に居るなんて寂しいですよね。
title:route A
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