「ちょーたろー!ちょーたろー!ちょーたろー!」

「あ、名前先輩こんにちは!」

「いただきます!」

振り返った長太郎に向かってダイブする。

「うわっ!」

「やっぱりいい匂い。落ち着くわ。」

ただいま昼休憩中。そしてここは2年生の教室の前の廊下。あたしは長太郎にくっついてフルパワーの吸引力で匂いを嗅ぐ。女子たちの目が痛いがあたしは君たちより歳上だ。テニス部マネージャーだ。毎日跡部にこき使われてるんだこれぐらいいいだろう。どうだ、逆らえるもんなら来やがれ後輩共よ。ちなみにあたしたちは付き合ってはない。前に宍戸に見つかってゴミを見るような目で見られたけどそんなの気にしない。というか宍戸も嗅ぎたいだろう。ただただ悔しかったんだろう。嗅がしてやりたいがこれはもうあたしの日課なんだ。これをやらないと午後の授業は受けられない。それにしても今日も相変わらずいい匂い。長太郎らしい爽やかなフレーバー。うーん、幸せだ。

「先輩。さすがにもう離れてもらってもいいですか?」

「やだ。もうちょっと。」

「恥ずかしいですから。」

「なにを今さら。もう慣れたでしょ。」

「慣れませんよ!」

「周りの目なんて気にしない。みんなじゃがいもだと思えばいいよ。」

「そういう問題じゃないですよ。」

「じゃあ目を瞑ってたら。」

「だからそういう問題じゃないですって。」

「なら場所変える?部室とか。」

「ますます恥ずかしいですよ。」

「もう。これ以上いい案は浮かばないよ。あたしアホなんだから。」

「それ自分で言うんですか。俺は先輩にくっつかれてることが恥ずかしいんです。」

「えぇ、やだよー。あたしの癒されタイム無くすなんて。死んじゃうよ。」

「俺だって先輩のせいで辛いんですよ。」

「ひ、酷い。」

「酷いって。先輩が可愛いことするから俺我慢するの大変なんですよ。」

「へ?」

「人前だからなんとか抑えてますけど二人きりでこんなことされたら我慢できる自信ありませんよ。」

「ちょ、ちょっと君。何を言っているんだい?」

「だからいい加減にしないと襲っちゃいますよって言ってるんです。」

「ば、ば、ば、ば、馬鹿じゃないの。先輩をからかうなんてよくないよ。」

「馬鹿は先輩ですし、後輩をからかうのはダメですよ。本気になっちゃいますから。」

「本気って…本気なの?」

「本気です。先輩のせいで好きになっちゃいました。」

えっ、ちょっと、そんな、公開告白だなんて。あ、あたし顔真っ赤になってる?!やだ、もう、後輩たちが見てるじゃない。先輩恥ずかしい!



「なぁ日吉。」

「あぁ、宍戸さんこんにちは。」

「なんであいつ、もじもじしてるんだ?」

「公開処刑です。」

「は?」

「深入りしないほうがいいです。」




20140928
公開告白って地獄ですよね。特に周りは。

title:夜に融け出すキリン町

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