※手塚がへたれで残念。全くかっこよくないです。



「もういい。手塚はあたしのこと別に好きじゃないんでしょ。嫌々付き合ってたんでしょ。いいよ。もう解放してあげる。じゃあね。」

こんな可愛くない台詞を吐いて彼の前から立ち去る。恐らく彼はもの悲しい顔をしてあたしの背中を見つめているんだろう。でも振り返らない。あたしは怒っているんだ。

手塚と付き合いだして半年。キスもしてなけりゃ抱き締められたこともない。手はあたしから半ば強引に繋いだ。付き合いたての頃はこういうことに真面目で誠実な所がかっこいいと思っていたが。半年も経つとあたしも年頃の女なのでむずむずする。ムラムラではない。多分。そもそも告白だってあたしからだし。そういえば手塚から好きってちゃんと言われたことないな。追い詰めて追い詰めて無理矢理言わせたことはある。

「それは違う。」

あたしの背中に向かって手塚が言う。 振り返ると手塚があたしのすぐ目の前にいた。お前は忍者か。

「何が違うの?」

「嫌々付き合ってたわけでもないし。好きじゃないわけじゃない。」

「なに?よくわかんない。」

「だからその、…好きだから付き合ってる。」

おぉ。初めて好きって言われた。なんか新鮮すぎて嬉しさより驚きの方が先に来た。

「本当に?じゃあなんで抱き締めてくれたりキスしてくれないのよ。」

「それは……照れくさくてだな。」

「だろうね。でも照れくさいって言ったってねあたしの方が今まで何倍も恥ずかしいことしてたわ。」

そうだ。あたしは手塚に抱き締められたりキスされたくて色々アピールしてたんだ。でもこの男は鈍感で全然気づかないから、最終的にド直球に迫ったのにまんまとかわしやがった。正直あたしだってやってて超恥ずかしかったんだからな。寝る前に思い出しちゃって恥ずかしさのあまり眠れなくなったりしたんだぞばか。大石にも相談したし。役に立たなかったけど。

「色々頑張ったんだよ。」

「すまない。」

「もういいよ。あたしが急ぎすぎた。手塚の心の準備ができてからでいいよ。大人しく待ってるから。」

あれ?自分言ってて思ったけどこれ普通男子が言う台詞だよね。少女漫画とかに出てくる。しかももっと先の段階で。抱き締める心の準備ってなんだよ。あたしは妖怪かなんかか。

「わかった。」

「はい?」

わかった?だいたい今の流れだと何かアクション起こすでしょ。フラグ立ってたでしょ。やっぱり手塚に回りくどいのは通じないのね。もういいよ。本当に心の準備が出来るまで待つよ。

「じゃあもう遅いから帰ろ。」

「あぁ。」


あたしは手塚の手を取って自分の手と合わす。手塚を見ると驚いた顔をしている。

「いやいやいや、大人しく待つとは言ったけどこれはいいでしょ。初めてじゃないんだから。」

「あぁ。」

手塚は了承したようで、一緒に歩き出す。顔は真っ赤だけど。やれやれこの様子だとなかなか先へは進めそうにない。大人しく待つって言っちゃったからもう自分から強引にいけないし。やばい。自分で自分の首絞めちゃったかも。はぁ。待つって言わなきゃよかった。あたしおばあちゃんになっちゃうよ。でもそこまでいっても一緒にいたいと思っちゃうあたしは相当この男に惚れてるようで。…悔しい。




20140920
なんかすみません。一回やってみたかったの。

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