最後に私が思ったのは

あなたに会いたい

伝えたいことがあるから

まだ待ってよ

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「んん……ん?」

目が覚めると横断歩道の真ん中にいた

そして人が集まっている

「大丈夫か!?しっかりしろ!!

今救急車がくるからな!!」

知らないスーツ姿のおじさんが懸命に声をかけてきた

「………?救急車?」

そこでやっと自分の状況を悟った

立ち上がると足元には私が倒れている

血をいっぱい流して

ああ、私信号無視の車に跳ねられて…

数分前の出来事が急にフラッシュバックした

車が突っ込んでくる時、宙を舞った時

私は幼馴染みの事を考えていた

死ぬことより、伝えたいことがあるのにと

恐怖より後悔をしていた

神様がいらっしゃるならきっと、

私に慈悲をくれたのだ

そう思うと直ぐに彼の家へと走り出した

呼吸の乱れも、風も感じない

ああ、私、死ぬんだ

はやくはやく

消えてしまう前に



「わかしっ……!!」

彼は部屋にいた

机に向かい、本を読んでいた

「……?お前いつの間に?」

そう言って振り向いた彼は唖然としている

驚いて大きく目を開いた

「は?お前、透けて…」

その言葉に胸がぎゅっとなる

「さっきね、事故にあったの」

そう伝えると、彼は頭を抑えた

「幽体離脱って事か?」

そう確認して目を細めた彼に、私は頷いた

「私ね、言わなきゃいけないことがあるの」

私の切羽詰まった声に彼は身を固くした

「……もう、あまり時間がないみたい」

自分の手を見て気づく

さっきより薄く透けている

足元に至っては少し消えかかっている

「…………」

彼は何も言わなかった

けれどその手は震えていて

私はもう触れることの出来ない彼の手に自分の手を重ねた

「……若、大好きだよ。

ずっとずっと、大好きでした。

今までありがとう。

………さようなら」

その言葉を最後に私の体はすうっと消えた

そして私の意識は消えた




おわり
2015/12/18




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