ある冬のある放課後

私はとんでもない男子会に鉢合わせました

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

部活が始まるまであと30分

思った以上に時間が空いてしまった

ストップウォッチなどが入った籠を持ち直す

これを持っていったら準備は終わりなのだ

マネージャーが三人もいるとそれなりに準備も片付けも早くなる

腕時計に目を向けるも、はやり時間が余り過ぎている

どうしたものかと思いながらゆっくり歩いていると

未だ制服姿の縁下が部室の周りをウロウロしていた

珍しいものを見てしまったので声をかけることにした

「ちからー?何してん……」

声をかけつつ手を振っていたが

その手を捕まれ、逆の手で口を塞がれた

「しーっ!静かに!」

耳元でそう囁かれ顔に熱が集中する

無我夢中で頷くと、力はやっと離れてくれた

そして扉に耳を貼り付けた

よく分からなかったが、真似する様に扉に耳を傾ける

すると、ひんやりと硬い扉の感触と中から数人の声が聞こえた


「で、だ。ウチのマネージャーで誰が1番か。今日ここで決めるべきだと!」

田中の力説が聞こえ、大体の予想がついた

力は、興味はあるけど参加したくないと

目でそう訴えている

「潔子さんはお姉様な高嶺の花!やっちゃんは可愛い妹系!

さあ、お前らぶっちゃけどっちなんだ!?」

西谷のデカイ声で耳の奥がキーンと鳴る

というか、私は!?

口に出せないので内心で悪態をついてから、再度中へと意識を戻す

「どっちも捨てがたいよなー」

木下の発言に、恐らく頷いているであろう成田

いや、お前らも私のこと突っ込まねーのか

「谷地さんは可愛いですよね…」

ぽつりと聞こえた山口の声に

割と真剣さが混じっている

「おー、可愛いよなー!谷地さん!」

便乗する日向

「………吉野先輩がいつも明るくて好きッス」

選択肢から除外された私の名を出したのは影山だった

“好き”と、ストレートな言葉に嬉しさと恥ずかしさが入り混じる

「あー、影山。あいつはダメだ」

田中の残念そうな声が聞こえる

何がダメなんだ

「おう、あいつは力に惚れてるからな!」

西谷の快活な笑い声と堂々とした言葉に一瞬何を言われたか分からず

隣の力が頬を赤く染めてから、漸く私も状況を理解した

「……そうなんすか」

影山の感情の分からない声を合図に

私はその場を走り去った

……はずだった

「待って!」

私の手首を掴んで引き止める彼

“私の想い人”はどんどん赤くなる顔を隠しもせずに私を見た

「今の話、ほんと?」

羞恥で逃げ出したい気持ちもあった

けれど懸命に頷いて彼を見た

嬉しそうな彼の顔が近くて

まるで告白の様なキスをした



あれは手足の冷えるとある冬の

ちょっとした恋愛成就のお話



END
→あとがき




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