きっとアナタの事は一生わからない
それでもね
私はアナタがいいの
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「黒尾先輩ナイスキー」
声を出すと彼はにやりと笑う
さも当然のことだと言うかの如く
彼は私の想い人
バレー部のマネージャーに勧誘され、気づいたら頷いていた
彼は人を魅せる
そして私はそれに吸い込まれた
けれど内面を見せてくれることはないし
そもそも距離なんて近づけない
アナタはよくわからない人
きっと理解なんて出来ないんでしょうね
「吉野」
それでも私は名を呼ばれたら嬉しくてすぐに駆け出す
アナタを知りたくてその視線に私を写して欲しい
例えアナタに彼女が居ても
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「真琴先輩またここに居たんですね」
お昼休みの穏やかな時間
私は中庭の、人気の無い場所で微睡んでいた
薄く目を開くと、後輩の犬岡がにこにこと見下ろしていた
隣を勧めると、嬉しそうに一緒に横になった
「ここ、気持ちいいですよね。先輩のお気に入りですもんね」
こちらに目線を寄越している事に気付き
私もそちらを向いた
「んー。ご飯のあとはここでお昼寝が一番だよ」
そう微笑むと彼もまた微笑み返してくれた
「俺もここが好きです。先輩と二人で昼寝出来ますからね」
その言葉に私の目はぱちりと覚めた
驚いて見ると、彼は照れ笑いの様な暖かい笑顔を向けていた
彼と居ると心が暖かくなって、この笑顔を曇らせたくないと心底思う