きっとアナタの事は一生わからない

それでもね

私はアナタがいいの

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「黒尾先輩ナイスキー」

声を出すと彼はにやりと笑う

さも当然のことだと言うかの如く

彼は私の想い人

バレー部のマネージャーに勧誘され、気づいたら頷いていた

彼は人を魅せる

そして私はそれに吸い込まれた

けれど内面を見せてくれることはないし

そもそも距離なんて近づけない

アナタはよくわからない人

きっと理解なんて出来ないんでしょうね

「吉野」

それでも私は名を呼ばれたら嬉しくてすぐに駆け出す

アナタを知りたくてその視線に私を写して欲しい

例えアナタに彼女が居ても


△▼△▼△

「真琴先輩またここに居たんですね」

お昼休みの穏やかな時間

私は中庭の、人気の無い場所で微睡んでいた

薄く目を開くと、後輩の犬岡がにこにこと見下ろしていた

隣を勧めると、嬉しそうに一緒に横になった

「ここ、気持ちいいですよね。先輩のお気に入りですもんね」

こちらに目線を寄越している事に気付き

私もそちらを向いた

「んー。ご飯のあとはここでお昼寝が一番だよ」

そう微笑むと彼もまた微笑み返してくれた

「俺もここが好きです。先輩と二人で昼寝出来ますからね」

その言葉に私の目はぱちりと覚めた

驚いて見ると、彼は照れ笑いの様な暖かい笑顔を向けていた

彼と居ると心が暖かくなって、この笑顔を曇らせたくないと心底思う





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