私にとってアナタは

“私の全て”だった


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「真琴、話がある」

そう言われて呼び出された

人通りの殆ど無い夕方の公園

呼び出し相手は彼氏の飛雄

最近は部活ばかりでろくに構ってもらえず

急な呼び出しにも関わらず、喜んで飛んできた

「あ、飛雄!話って何?」

ようやく待ち人が来たので嬉しくなって駆け寄ると

彼は静かな表情で私を見た

ぞくり

私は背中に悪寒が走るのを感じた

ああ、嵐の前の静けさってやつかな

彼の表情を見て、嫌な予感が下から這い上がってくる感覚がした

ああ、話聞きたくない

「飛雄、最近頑張ってるんだってね!

烏野は春高の為に3年残るの?

青城はみんな残ったんだよ」

思わず話を逸らしたが彼の表情は変わらなくて

まるで心ここにあらず

「ああ。………なあ」

彼は早く話を切り出そうとしてくるが私の口は閉じない

「春高でも負けないよ!

白鳥沢にも勝つんだから!」

まるで彼の話を拒んでいるかの如く私の話は続く

私は心の中で泣きそうになりながらも笑顔を崩さなかった

「あのね!………あのね」

私の言葉は続かない

ああ、ここで終わりなんだって悟った

俯き気味の彼より深く俯いて言葉を探した

「なあ、俺ら終わりにしよう」

彼も見据えていたんだ

首の皮一枚で繋がっていた私たちの関係に

「…………やだ」

私は今でも飛雄が大好きで

彼もそうだと思っていた

だから放って置かれていても我慢した

今度は足元から全てが崩れていくような感覚

「俺らはもう、うまくいかない。それに…」

溢れそうな涙をぐっと堪えて飛雄の顔を見上げれば

バツの悪そうな顔をしながら言葉を探している

何か言わないと

このまま終わってしまう

私の脳内は真っ白ながら、必死に繋ぎ止める術を考えている

それでも片隅にいた“もう終わり”という気持ちがどんどん膨張して

私は正常な考えが出来ない

「俺、他に好きな人が出来た」

ガツーン

頭の中でそんな音が聞こえた気がした

どんなショッキングな映像や音より

この言葉が一番私の心を抉った

「………そっか」

私の口から出るのはそんな言葉だけ

それが誰なのかとか、私はまだアナタが好きなんだけどとか

言いたいことはいっぱいあるはずなのに

唇は嗚咽を漏らすだけで何も語らなかった


最後に聞こえたのは飛雄からのさよならと、遠ざかっていく足音で

あとはやっぱり私の嗚咽だけだった

大好きで

大好きで

私には飛雄しかいないのに

受け入れるしか選択肢がなかった

痙攣で音の漏れる喉と、地面を湿らせる涙

どんなに想っても、もうアナタは私の恋人ではない

どんなに焦がれても、もうアナタは私の傍には居てくれない

それが辛くて辛くて

その場を離れる事が出来なかった



END
→あとがき




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