私は臆病だ

だから私たちは、未だに幼馴染みなんだ


◇◆◇◆◇◆◇◆


「おーい。起きろー。授業終わったぞー!」

私はそんな声に揺り起こされた

「ん…大地?おはよう」

目を薄く開き、 相手を確認すると私の心臓は大きく鳴った

平静を装って、大きく伸びをしながら辺りを見渡すと

隣の席の東峰を囲むように、菅原と大地がいた

時計を見るとお昼休みの時間になっていた

「あれ、二限目移動教室じゃなかったっけ?」

寝ぼけ眼に思考を巡らせ、東峰に尋ねると彼は不服そうな顔で

「ちゃんと起こした。二度寝してたけど」

と返答してくれた

それならそれで仕方ないと思い、財布を片手に教室の扉に手を伸ばした

「飲み物買ってくるー」

片手をひらひらと揺らし外へ出ると、大地も一緒に教室を出てきた

「俺も飲み物買ってくるわ」

菅原と東峰にそう伝えると、私の横に並び歩く

「お前さー、今年受験生なんだから授業くらいしっかり受けなさいよ」

隣を歩く幼馴染みは、まるでお母さんのような小言を言っている

「大地は私のお母ちゃんですか」

私は自販機のカフェオレのボタンを押すと、大地は深く溜息をついた

そしてまた隣に並んで歩き出す

お昼ご飯はいつも4人で屋上に行く

クラスが別々になってしまった私達は、この時間しか会うことがない

「そうだ。今度の試合、また見に来いよ」

大地が嬉しそうに話題を変えてきた

「うん、勿論。1年生入って活気出たんだってね」

進級してクラスが変わり、落ち込んでいた私とは真逆で

期待の1年生が入った大地は嬉しそうにしていた

「そうなんだよ!今年の烏野は全国に通じる!」

嬉しそうに話す大地が好き

バレー馬鹿な大地が好き

真面目で努力家な大地が好き

私は小さな頃から大地が大好き

その想いを伝えるなんて怖いことは出来ないけど

出来る限り傍にいたい

私の胸はきゅっと締め付けられたように痛む

「頑張ってね。応援してるから。」

そう伝えることでいっぱいいっぱい

そんな事、あなたは知らないんでしょうね

私は勇気を振り絞ることなんて出来ず、みんなでお昼ご飯を食べた

教室まで戻る途中、トイレに行く為みんなと別れた

用を足して教室に戻る途中、可愛らしい声が私を呼び止めた

「吉野ちゃん!」

パタパタと駆け寄る足音に、私は不快な気分で振り返った

「道宮さん」

ガサツでズボラな私とは真逆で

可愛くて頑張り屋で女の子らしい

別に可愛い女の子が嫌いなわけじゃない

私が彼女と関わりたくないのは

“彼女が大地を好きだから”

その一点のみ

「…何かな」

ちゃんと話せているだろうか

声は低くなっていないだろうか

そんな心配はご無用だったらしく、彼女は明るく笑いかけてきた

「今度の男子バレー部の試合、応援に行くよね?」

私の中のどす黒い気持ちが濃くなった気がした

「行くけど…それが?」

なるべく顔に出さない様に、気を遣いながら言葉を口にしたが内心は落ち着かない

「私と、バレー部の友達も行くんだけど一緒に行かないかなーって!」

彼女は何が目的なんだろう

大して親しくしたことのない私と?

あなたの好きな人の幼馴染みと?

「あぁっ!いきなりでごめんね!前に1人でいたの見たからどうかなって!」

戸惑う姿も可愛らしい

ああ、私では敵わない




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