アナタは誰にでも優しいね
それが悪いとは言わないけど
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「あの、私急いでるんですけど」
不機嫌全開の顔で彼らにそう言うが誰一人聞いちゃいない
「えー、いーじゃん!俺らに付き合ってよ」
人の迷惑お構いなしなナンパに捕まって辟易していた
「あのさ、迷惑そうだから。手、離してあげてくれないかな?」
聞き覚えのある声に目を向けるとそこにはクラスメイトの東峰がいた
「はあ?……え?あ、すいません。お兄さんの連れでしたか」
彼等は東峰の顔を見ると真っ青になり、そのまま逃亡してしまった
「あれ?まぁ、いいか。それより吉野、大丈夫だった?」
クラスでも殆ど会話なんてしたことなかったけど、私の名前を覚えてくれていたらしい
彼は見かけによらず“イイヤツ”だ
「あ、ありがとう。助かった」
私はやっとナンパから開放されてホッとした
彼はへらへらと笑うと手を振ってその場をあとにした
私は何だか頬に熱を感じ、それが恋だと気づいたのは
先程の出来事を思い出した、夜になってからだった
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あれから私は、よく東峰と話すようになった
けれどそれ以上もそれ以下もない
そして、見ていて気づいたのは
女子にも男子にも優しい
今もそうだ
「東峰〜、ありがとね!」
「いいよ〜。これぐらい」
私はただ呆然と見つめるだけ
ああ、醜い
きっと声をかけたら振り向いてくれる
でも、それは私にだけではない
東峰は優しすぎる
それが、こんなにも辛いなんて
ああ、逃げ出したい
そう思っていたところに丁度良く声がかかった
「ごめん、真琴。このゴミ捨ててきてくれない?手、空かないんだけど邪魔でさ〜」
友人がゴミ袋を指さしながら困ったような顔をしていた
今は文化祭準備中
彼女は看板の色塗りと指示出しで絶賛大忙し
「おーけー。今、手空いてるから行ってくるよ」
「ありがとう!助かる!」
そう言うと彼女は作業に戻ってしまった
私は大量のゴミ袋とダンボールの山に対峙すると
一つため息をついた