「ゆう!」
私は待ち合わせ5分前に到着したはずなのに
相手は既に来ていた
「おー、おはよ」
携帯を弄っていた彼が顔を上げて手を振る
「早いね!いつからいたの?」
いつもより早起きして念入りに準備した私
いつもギリギリに到着するくせに珍しく早い彼
休日のお出かけに気合を入れてしまう関係です
「んー、10分くらい前?」
普通なら“俺も今来た所だよ”なんて言うのがセオリーだけど
バカ正直に本当の事を言う彼だからこそ
私はあなたを好きになったんです
「待たせてごめんね?」
もう秋になったんだなーと肌寒い空気を感じ取った
手を擦っていると右手を取られ、夕に握り締められた
「気にすんな!行こうぜ」
そう明るく言う彼は、私の大好きな笑顔のまま歩き出した
私もきゅっと握り返して夕の隣を歩く
今日は夕のお家でゲームをしようと誘われていた
本当はね、夕
10/10の今日、二人で誕生日をお祝いしたくて張り切ってるんだよ
少し大きめの紙袋を振り回さないように気をつけながら歩いた
お家に上がるとご家族は留守みたい
私は夕の部屋に上がると紙袋をテーブルの上においた
「そういえばそれなんだ?結構でかいよな?」
夕は全く気付いていないのかキョトンと紙袋を眺めている
「ふふーん!開けてみてよ!」
私は得意げに、それを夕の前に差し出した
「ん?……おおお!ケーキか!」
箱を開けた夕が喜んでいるのをみてホッとした
お母さんに頼み込んで教えて貰った甲斐があったらしい
「夕、誕生日おめでとう!」
私がそう言うと、夕は照れくさそうに笑った
「ありがとな、真琴。この先ずっと俺の誕生日を祝って欲しい」
その言葉とほぼ同時にぎゅっと抱きしめられた
「もちろん。大好きだよ、夕」
私も抱き締め返してそう言った
生まれてきてくれてありがとう
Happy Birthday 夕
END
→あとがき