初めての会話は緊張した

初めて手を繋いだ時はもっと緊張した

別れ話をされたときは死ぬ程緊張した

でも、1番緊張したのは

彼が試合に出た時だ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「山口君ってもしかしてバレー部なの?私もなんだ!」

始まりは部活という共通点だった

「スタメンじゃないけどね」

苦笑しているけど、バレーが大好きだった

彼との時間は心地良くて

私が彼を好きになるのに時間はかからなかった

「山口、私…
山口の事が好きなの。付き合ってください」

彼も同じく想ってくれていた

初めてのデートで、初めて手を繋いだ

初めてがいっぱいで私の頭は真っ白で

心臓はばくばくとしていた

でも、彼の方がよっぽど緊張していて

繋いだ手から滲む汗がその証拠

私達の恋はゆっくりと加速して

想いは膨らんでいた


でもそれは唐突に終わりを告げた

とある試合の、相手のセットポイント

忠はピンチサーバーとして初めて試合に出た

結果は、ネットにかかり1ポイントも取れずにベンチへ下がる事になった

ジャンプフローターの練習をしていることは知っていた

でも彼は、緊張で本領を発揮できなかった

試合の後、一緒に帰路を辿る時に告げられた

あなたからの“さよなら”

本気でバレーをする為に私を切り捨てた

それはあなたの優しさと強さと後悔

そして私の繋ぎとめられない弱さ

二人の歯車は噛み合わなくて崩れ落ちて

もう戻らない




「山口ー!サーブ練しよ!」

私達の関係は終わってしまったけど

私はあなたの力になりたくて申し出た

昼休みのちょっとした時間

ポジションがリベロの私は、彼のサーブを受ける

それだけが私達の唯一の繋がり

必死に繋ぎとめたい私の我が儘

「あ、ごめん。今日はパスする。ちょっとマネージャーのとこ行くから」

山口はそういうと5組の方へ走っていった

先輩から、男バレに新しい1年マネが入ったと聞いた

ずるい。一緒に居られるなんてずるい。

そう嘆く私の後ろに気配を感じた

「あー、山口の元カノだっけ?」

振り返ると山口の尊敬している月島君がいた

「あ、月島君。何か用?」

私は落ち込んだ気持ちに叱咤し、月島君と向き合う

「次の試合も山口はピンチサーバーだろうね」

彼は一言そう言うと自分の席に戻って音楽を聞き始めてしまった




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