あの時の彼はチームメイトと上手くいかなくて
いつもいつも一人でいた
けれど、努力家で勝利に貪欲でバレー馬鹿
私は、そんな彼が大好きだった
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「集合!」
岩泉先輩の声でみんなが監督とコーチの元に集まる
足を痛めているキャプテンはここにはいない
マネージャーである私も先輩と一緒に駆け寄った
「17日火曜日に練習試合をすることになった。放課後の時間なので1試合のみ。
相手は……烏野だ」
2、3年生は何の反応も見せてなかったが、私達1年生は至極動揺した
烏野と練習試合?
「向こうには影山を正セッターでフルに出すように条件を出している。及川がいない分、気を引き締めて行くように!」
溝口コーチが続けた言葉が頭の中でぐるぐると回る
練習が終わり片付けを始めるも、頭の中は影山のことでいっぱい
「影山が正セッターとか楽勝なんじゃね?」
ふと国見の声が耳に届く
「だよな。てか、向こうでどんな独裁政権敷いてるんだろうな。」
金田一がそう言うと二人はニヤニヤと笑う
影山を嫌っている
それが至極悲しくて、でもみんなには当たり前のことで
「無駄口叩いてないで片付けたら?」
そう当り散らした。私は影山の話になると酷く不機嫌になる
金田一と国見はそれを知っているので、気まずそうに倉庫に駆けて行った
「帰るぞ。真琴」
制服に着替えると更衣室の外ではじめちゃんが待っていた
私とはじめちゃんは家がお隣さんなのでいつも一緒に帰る
私たちは日の沈みかけた空を見上げて帰路を進む
「あんま、金田一と国見を虐めてやるな」
はじめちゃんがそうぽつりと呟いた
「虐めてないよ。無駄話してたから注意しただけだもん」
そう不貞腐れて言う
「仕方ないだろ。仲悪いんだし」
はじめちゃんは大きく溜息をついた
わかってるよ。という嘆きは声には出なかった
「お前がどんなに影山を好きでも、俺らは烏野には負けねえ」
はじめちゃんはそう言うと私の頭をぐしゃりと撫でた
「当然。勝たないと許さない」
私はその手を払うことなく撫でられ続けた