そこに見知った顔を見かけた

あの子は飛雄の……?

あの可愛らしい少女が浴衣を着ている

隣を見れば予想通り飛雄がいた

手を繋いで頬を染めている

私は二人の姿をただ、ぼーっと眺めていた

不思議と悲しみも、嫉妬も、何も無い

今はただ、勇が帰ってくるのを待つだけ

いつからなのだろう

私の傷はいつの間に癒えていたのだろうか

彼等を応援したいとは思わないけれど

どう転ぼうときっと何とも思わない

そう思える自分に心底驚いた

独りでは癒えなかったかもしれない

けど、私には勇がいたから――――


「ただいま。いろいろ買ってきたぞ」

気づけばすぐ傍で、袋を沢山持つ勇がいた

「わー!何買ってきたの?」

袋の中身は沢山あった

焼きそばにたこ焼きにイカ焼き

わたあめにリンゴ飴にラムネ

「うーん、どれも捨て難いな〜!

あ、半分こしようよ!」

私の提案で全て半分こにする事にした

生憎あーんなんてする余裕は、お互い無かったけど

色んな話をしながら食べるのが凄く楽しくて、嬉しくて

一通り食べ終わっても、境内で二人で話し続けた

そして会話が途切れた頃、昨日の決心を思い出した

「ねえ、勇。聞いて欲しい事があるの」

私は静かに話を切り出した

彼も雰囲気を察したのか静かに頷いた

「いつも傍にいてくれてありがとう。

好きだって言葉も待ってるって言葉も嬉しかった」

私は勇の目を見つめてぽつりぽつりと話をした

「さっきね、飛雄とあの子が手を繋いで幸せそうにしていたの。

勇が食べ物、買いに行ってくれてた時に」

そう言うと、勇の顔は悲しそうに伏せられている

そして小さく“一人にしてごめん”と呟いた

「違うの。誤解しないで。

あのね、私平気だったのよ」

そう言うと彼は少し不思議そうに小首を傾げた

「何とも思わなかったの。

流石にお幸せになんて思えないけど。

でもね、私気づいたの。

勇が傍に居てくれたお陰で私はもう大丈夫だって」

そう言い彼の手をぎゅっと握る

「私ね、勇の事が大好き。

だからこれからも傍にいて欲しい」

照れ笑いをしながら見れば、彼は顔を真っ赤に染めていた

「………まじで?」

口をぱくぱくさせてようやく出た言葉は緊張した声色だった

「……まじで。好きです。勇太郎」

その言葉を聞いた彼は、私を両手いっぱいに抱きしめてくれた

「すっげー嬉しい!俺も好きだ!」

見上げた彼の目はとても嬉しそうで

応えられて心底良かったと思えた

その視線が私とかち合うと、お互いに顔を近づけた

「絶対離さないから、真琴」

低く聞こえた彼の声に吸い込まれるように

私たちは二度目のキスをした

初めてしたキスよりずっと甘く、ずっと嬉しかった






ねえ、飛雄

私とアナタはこれから別々の道を歩むでしょう

けれど私はそれを後悔しないし

アナタにも後悔しないで欲しい

今、手に取った幸せを大事にして下さい

私はこの人と幸せになるから

だからこれで本当に


さよなら、かつて愛した人




END
→あとがき




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