「もしさ、そうなっても吉野には口出す権利ないんじゃないかな?」

いつもとは違う強気な言葉に私は一瞬戸惑ったが

「あ゛?」

低く強気な語気に周りがこちらを見だした

それでも東峰は怯むことなく強く言い放った

「だって、行動にも言葉にもしてないのは吉野だろ?そんなやつに口を出す権利はないと思う。」

その言葉に言い返すことが出来なかった

菅原が東峰を必死で止めているのを横目にみて私は笑った

「確かに。フェアじゃない。」

そう伝えると東峰はふっと笑った

周りからは何がなにやらといった空気を感じた

勿論その中には大地の視線もあった

私は何事も無かったように笑うと、道宮さん達を連れて観客席へと向かった



烏野は2試合共勝ち進めた

前の試合の時は負けてしまった伊達工業にも勝てて

3年はみんなえらく喜んでいた

そして明日の青葉城西戦の為に、みんな学校へ戻るみたいだ

顧問の武田先生の運転するバスで帰っていった

私たちも帰ろうと地元の駅で別れた

だが私は、素直に帰る気なんてさらさらなく

道宮さんの背中に“ごめん”と小さく呟いてから

学校へ向かった

校門の前で大地を待ちながら、紅い夕日を見つめた

昔はこの時間になると、一緒に手を繋いで家まで帰った

いつから止めてしまったのかもう思い出せない

それでも大地以外と手を繋ぎたいと思ったことなんて一度もなかった

昔から私の気持ちは膨らむばかりで

好きな所が増えるばかりで…

「あれ?何してんの真琴」

振り向くと、ミーティングを終えた大地が不思議な顔をしていた

「大地待ってた」

そう伝えると周りの一、二年生がにやにやしている

私は集団の中から大地を引き抜き、2人で帰路を辿った

距離を置いて後ろの方からバレー部の彼らがついてきていたが

不思議と気にならなかった

「んで?どーしたのよ?」

私が口を開かない為、大地の方から切り出してくれた

きゅーっと愛おしくなる気持ちを何とか抑えつけ

「昔遊んだ公園に行こう」

と、言うと大地の手を引いて公園へ向かった

昔繋いだ手とは随分変わっていて

ゴツゴツしてて、豆が潰れて硬くなった手は大きかった

でも、暖かさだけは変わらなかった




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