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10月に入ると肌寒く、薄手の上着を羽織る

私は携帯の地図を確認しながら会場へと足を運んだ

遅くなってしまったので急いで観客席へ上がると

コートのエンドライン外に忠が立っていた

「ただしっ…!」

私は柵に寄って身を乗り出す

そして私が見たのは“あんなに練習したサーブを打たない忠”だった

そのラリーは烏野に入ったが、怒る監督の姿が視界の端に見えた

「なんで…?」

鼻の奥がつんとして必死に涙が流れないように歯を食いしばった

「あの…?烏野の応援ですか?」

声のした方を見ると、黒い烏野ジャージを着た女の子がいた

横には眼鏡の男性とショートヘアの女性がいる

「あ、はい。厳密には山口の応援なんですけど」

彼らの方へ歩み寄る

声をかけてきた女の子は1年生のマネさんだろう

とても可愛らしい

ああ、こんな可愛い子だったんだ

そう絶望的な気持ちになった

「山口くんの…?お友達ですか?」

小首を傾げてこちらを見る彼女は愛らしい

忠は本気でバレーがしたくて別れたんだと勝手に思ってたけど

こんなに可愛い子がマネなら振られるのも納得

いや、納得なんて出来ないししたくもないけど

「あー、元カノだよ。女子バレー部の吉野です」

私は爽やかに挨拶出来たかな?

この子に嫉妬心悟られてないかな

なんて、私の心配は無用だった

「えっ!?忠の元カノ!?」

そう言葉を漏らしたのは眼鏡の男性だった

直感でわかった

彼が忠にジャンフロを教えたんだと

脳内でそう考えていると、彼は驚くことを教えてくれた



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「試合。楽しかったか?忠。」

「いいえ…いいえ。」


「俺、試合で使えるようになりたいです。流れを変えたい。その為に彼女と別れてきたんです」

「はあ!?!?彼女は関係ないだろ!?」

「いえ、彼女は俺の“気の緩み”なんです」

「部活をとったのか。……お前は後悔してないのか?」

「後悔しかしてませんよ。俺が彼女に、もう一度気持ちを伝えるのは

試合でサーブを決めて流れを変えられた時です」




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