△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

練習試合当日



「久しぶりじゃねーの。…王様」

ドリンク用の水を入れに水飲み場へ行った帰り、そんな言葉が聞こえた

まさかと思い、重いドリンクを持ったまま走り出す

「烏野でどんな独裁政権敷いてんのか楽しみにしてるわ」

金田一のその声が聞こえると共に姿が見えた

烏野の人たちと、烏野のジャージを着た影山

私の心臓はばくばくと鳴る。走ったせいか、影山に対してかは、わからない

「………ああ。」

目が合う

けれどすぐに逸らされてしまう

影山を覆う空気が変わっている

そのせいなのか好きという気持ちが溢れ出す

「おー、青城のマネ?可愛いー」

烏野からの視線をよそに、私は持っていたドリンク入れの籠を金田一にぶつけた

「痛っ!」

情けない声が聞こえた

「こんなとこで油売ってるとコーチに怒られますよ。てか、さっき集合かかってましたよ」

矢巾先輩にも言うと、二人は青い顔で駆けて行った

私も二人を追うように体育館に戻り急いで試合の準備を進めた


△▼△▼△▼△▼△▼△▼

結果、私たちは烏野に負けた

ピンチサーバーで及川先輩が入ったものの

烏野の10番の速攻は止められなかった



「影山!」

帰る支度を始めている烏野の方へ行き

私は想い人の名前を呼んだ

「……なんだ?」

彼は手を止め私を見た

常にピリピリしていた昔とはもう違う

「ちょっといいかな?…すみません、影山借りてもいいですか?」

烏野のキャプテンに断りを入れ、私たちは体育館を出た


「……久しぶり」

中学引退以来、まともに会話していないからか緊張で手汗が滲む

「ああ。久しぶり」

彼も気まずさから目線を外していた

「変わったね。烏野に入ったお陰だね」

私の言葉に素直にこくりと頷く

「私、青城のマネだけど影山のこと応援してるから」

私の言葉に影山は目を見開いて私を見る

「……なんで?」

そう問う彼は私の目を見ていて

その目に惹きつけられ、吸い込まれそうになった

「……影山が好きだから。どこにいても、どんなバレーをしてても、私はトスを上げる影山が大好きだよ」

私の目に涙が浮かんだ

彼は何も言わない

最大級の笑顔を作り“じゃあ、またね”と言うと

その場から立ち去った

バレー馬鹿で、色恋沙汰には無縁で

でもそんな彼を想わずにいられない私は

影山馬鹿なのかもしれない

私は大好きな人の仏頂面を思い出して笑みが溢れた


END

→おまけ




Back 






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -