…あれ。
現在、午前10時。
いつもならば、この時間帯には既に渡狸は起きている。
学校がある日は当然なのだが、彼は元々寝起きはいい方なので休日でも8時頃になれば勝手に自分で起きているのである。
今日は平日だが、彼が通っている高校は丁度昨日から夏休みに入っている。
ただ単に休みだからこんな時間まで寝ているのだろう。
それでも一応、起こしに行こうかな。
まぁボクが寂しいからってだけの理由なんだけど。

起こしに行く前に、ラウンジへ行ってコックである河住さんに簡単な朝食(もう朝って時間でもないけれど)を作ってもらう。
それを持って、渡狸の部屋へ。
軽くノックをするも、やはり返事はない。
鍵はかかってないので、勝手に開けて中へ入る。
すぐに、奥にあるベッドの上で渡狸が寝ているのが見えた。
朝食の乗ったお盆をテーブルの上に置き、ベッドへと近寄る。
「渡狸〜?」
呼びかけてみると、小さく呻きながら寝返りを打った。
「もーほら起きてよぉ。お昼になっちゃうよ〜。」
ゆさゆさと揺すってやると、漸く目が覚めたらしい。
何だようっさいな、と軽い悪態をつきながら目を擦る渡狸をわざと無視し、朝食を持ってきてやる。
「ほら朝ご飯食べな〜。まぁもう10時過ぎだから、朝昼兼用って感じかな。」
「…食欲ない、残夏が食えば。」
「え〜、ボクはもう食べたしいいよ。早く食べないと冷めちゃうけど…ほんとにいらないの?」
「ん…。」
もう夏だし、食欲がなくなるのも仕方ないか。
これはお昼に食べることにする。
一旦キッチンへ持っていこう。
「じゃあこれ置いてくるね。」
そう言いながらドアへ向かおうと一歩踏み出したのだが、軽く後ろに引っ張られるような感触が。
見ると、渡狸がボクの服の裾を掴んでいた。
「…何〜、どうしたのさ。」
「もう行くのかよ。」
「は?」
「…もう少しゆっくりしていけばいいだろ。」
恥ずかしいのか、俯いているので残念ながら渡狸の顔は見えない。
それでも彼の耳が赤く染まっているため、その表情は簡単に想像出来る。
こんな可愛いことを言われると、それだけで理性なんかは軽く吹き飛びそうになる。
「今日の渡狸は甘えたさんなの〜?」
「う、うるせー!…嫌なら別にいいけど。」
意地悪くにやにやと笑いながら見てやると、渡狸は顔を背けてしまった。
ほんと、いちいち可愛くて困る。
「嫌なわけないでしょ〜…ところで、」
「?何だよ。」
「ボク、お腹空いちゃったから渡狸が食べたいなぁ☆」
そう言ってやると、渡狸は既に赤かった顔を更に赤くしながら ばか、だとか色々言ってきた。
「ダメなの?」
それでも態とらしくそう聞いてやると、渡狸はボクと目を合わせないように 勝手にしろ、とだけ返事をした。
それじゃあ遠慮なく、

いただきます

end.




あっぷる様の5000hitフリリクに参加させて頂きました!
服の裾を掴む渡狸がツボすぎて……!!
早く残夏に美味しく頂かれればいいとry


up:2012/07/20

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