もう一ヶ月も経つ。俺と残夏が恋人同士になって。
 あれから、人前ではあまり態度は変わってないようだけど、二人きりの時はすごく優しくなった気がする。その変化は素直に嬉しい。
 でも、一つ不満があった。
 ……残夏が何もしてこない。キスも、それ以上のことも。
 俺だって男だ。その……好きなんだし、触れられたいと思う。
 だから、決めたんだ。そっちが来ないなら、俺が行くって。



***



 ……とは言っても、やっぱ緊張するな……
 早鐘を打つ心臓を押さえて、溜息をつく。
 目の前には残夏の部屋。でも、そのドアを開ける勇気がどうしても出なかった。その状態でかれこれ15分くらい経ってしまっている。

 ……やっぱり明日でもいいかも。もう11時過ぎちゃったし……
 言い訳をして戻ろうとした時、ガチャリとドアが開いて思わず肩が跳ねた。
 え、ちょ、マジ?

「どーしたの〜渡狸? こんな時間に」
「ざ、残夏……!」

 なんでこんなタイミングで……頭の中は真っ白で、完璧なパニック状態。
 固まってしまった俺に残夏が勘違いしたようで慌てて声をかけてきた。

「大丈夫? 体調悪いの?」
「ち、違う! ただ、えっと……」

 どうしよう。何か言わなきゃ。
 混乱した頭で思いついたままに口に出す。

「……なかなか眠れなくて……その、一緒に寝てもいいか……?」

 うわ。これはないだろバカか俺は。
 自分でも苦しい口実だと思ったけど、残夏は一瞬間を置いた後ニコリと微笑んだ。

「……いいよ、おいで」



***



「なあ残夏」
「なーに?」
「遠くないか?」

 背中をこちらに向けて横になる残夏に話しかける。
 同じベッドに寝てるのに、残夏と俺の間には妙な隙間があった。
 恋人だったらもっとこういうときって密着するんじゃないのか、普通。どうしてわざわざ端っこに行くんだ。

「え〜……だってベッド狭いじゃん」
「だから、くっ付けば全然余裕あるだろ」
「んーまずいいから。ほら早く寝なよ。おやすみ、ラスカル」

 誤魔化して布団をかぶる残夏に腹が立ってどうしようもなくて。
 布団を掴んで、思い切り自分の方に引っ張った。

「うわ!? ちょっと、渡狸何して……」
「……もっとこっち見ろよ」

 残夏がやっと振り向いて、もう逃げられないようにその上に押しかかると、動揺したような声が上がる。
 ぎし、ベッドが軋む音が部屋に響いた。

「俺達恋人同士じゃないのか?」
「そ、そりゃそうだけど」
「だったらなんで何もしてこないんだよ!? せっかく一緒に寝てるのに! お、俺は……!」

 こういうことだって、したいのに。
 小さく呟いて、残夏にキスした。
 目を閉じてるから分からないけど、驚いた顔してるんだろうなとは想像つく。
 その表情を思い浮かべて、してやったりという気分になった。
 の、だけど。

「……んっ……?!」

 唇に何か湿ったものが触れ、歯列をこじ開けられる。
 嘘、何コレ残夏の舌……??!
 気付いた時にはもう遅く、それに口の中をぐちゃぐちゃに掻き回されて。

「ん……んん、……ふぅっ…」

 自分のとは思えない変な声が出てしまって、酸素が足りないから頭もくらくらしてくる。
 ようやく離されたころには身体に力が入らず、残夏の胸に頭を預けて荒い息を吐いた。
 ふと、じっとこっちを見つめていた残夏と目が合う。

「バカだね、キミは」
「な、に言ってんだ、よ……」
「ボクが、せっかく今まで我慢してあげたのに」

 もう、知らないよ?
 そう言った残夏の目は初めて見るもので、それが嬉しかった。
 我慢、してたのか。そんなのいらないのに。
 だから、

「……うん。」

 俺を、あげる。



***



「あ……んっ、ふぁ、あ!」
「ふふ……卍里、可愛い」

 正直、何がどうなっているのか自分でも分からない。
 ただ残夏と繋がっているところが熱くて、頭の中も身体も全部、残夏だけでいっぱいで。

「ざん、げ……ざんげっ……!」

 名前を呼ぶだけで限界。
 ほかに意味のある言葉を口にできない。

「……卍里」

 ああなんでこんな時だけ名前呼びなんだよバカ。
 長い髪を揺らして、残夏は耳元で囁いた。

「すきだよ」

 俺も、と答える前に、いきなり突き上げられる速度が増した。
 予想していなくて、思わず仰け反って息を吸い込む。

「ひっ……?!……やぁっ、だめ…!」
「ごめんね、もう少しだから」

 ガクガクと身体が揺さぶられ、自分の意思と関係なく声が漏れる。恥ずかしいと思う余裕すら与えてくれなくて。
 両足を残夏の腰に絡ませてしがみ付き、そうするうちにいつの間にか意識を手放していた。



***



 翌朝。

「残夏のバカ。アホ。変態。」
「……恋人に対してそれはひどくない?」
「だって俺今すっごい腰痛いんだけど。普通ここまでやるか?……初めてだったのに」

 最悪。最低。
 こんなに辛いとは思わなかった。
 ……今日が祝日で、学校がないのがせめてもの救いだ。

「あー……確かにちょっと自制できなかったかな〜……」
「ちょっとどころじゃないだろ!」
「でも、」

 そこで前髪を掻き上げられ、額に柔らかい感触が落とされた。

「次は優しくするから」

 次。その言葉に頬が熱くなる。
 また、するのか。あんなことを。

「……んー? どうかした?」
「なっなんでもない! こっち見んな!!」

 必死で顔を見られないように枕の中にうずめた。
 ……一瞬でも、優しくしてくれるならいいかもなんて思ったことは、絶対言ってやるもんか!




End




リクエストありがとうございました!!
すみません自分ではこれが限界です……
リクエストされた方のみお持ち帰りOKです。


up:2012/03/26

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