「渡狸は可愛いね」
「??!」

 朝、妖館ラウンジ。
 いつも通り朝食を食べていた俺に、向かい側に座っていた残夏が突然そんなことを言うから、思わず飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになった。
 なんとか堪えたけど、その分むせてしまい「大丈夫?」と張本人に背中を擦られる。……それは俺が聞きたい台詞だ。

「なっ何言ってんだよバカ!!」
「別になんとなくそう思っただけだよ?」

 だからなんでそうなる?!

「俺は不良だぞ!! 可愛いわけあるか!」
「え〜? そんなこと言ってもやっぱキミは可愛いってば」
「んなっ?!」

 ざけんな、と立ち上がってさらに反論しようとして。
 だけど、そのとき音もなくのばされた手に腰を撫でられ、びくりと固まってしまった。

「腰、細いし」

 次はもう片方の手で掌を掴まれ、そこにキスされる。たちまち顔に熱が溜まり出すのを感じた。

「手も小さくて、さ」

 最後に触れられたのは頭のてっぺん。俺には見えないそこに、唇が落とされる。

「背も低いよね。それに、目も大きくて……まあほかにもいろいろあるけど、まとめると渡狸には可愛いとこしかないよ」

 クスクスと笑われると、さっきとは違う意味で顔が赤くなった。

「なんだよそれ!? つーか俺はまだまだ成長期だっつーの!! 見てろ、もう少ししたら残夏なんてすぐ追い越してやるからな!!」
「どーかな〜? 豆狸だし、たかが知れてるんじゃない?」
「バっバカにしてんじゃねーよ!! 大体それは関係ねーだろ!」
「ふふー♪」

 見下ろされる視線がムカついてたまらない。
 ……マジでなめてんのか。殴ってやろうかと思ったけど。

「だから、そのままでいてね? 渡狸」

 残夏がそう言って綺麗に微笑んできて、ついそれに見惚れてしまった。
 その笑顔に、俺は弱い。
 コイツはそれを知っててやるんだから、どうしようもなくずるいと思う。
 ……ああ、でもやっぱ癪だな。
 相手のネクタイを掴み、ぐいっと自分の方に引き寄せる。

「……っ!?」
「……お前の思い通りになんか、なってやんないから」

 ぷは、唇を離して、いつも残夏が浮かべてるからかうような笑みを真似してやった。
 どーだ。少しは見直したか。
 ……ところが。

「…………ホント、キミ可愛すぎでしょ……」
「は、はあああ??! なんでだよ?!」

 逆に、ぎゅーぎゅーに抱き締められてしまって。
 ……なんか俺悪いこと言ったのか? また可愛いって……
 あんまり納得いかなかったけど突っぱねる気にはなれなくて、されるがままに身を預けた。



***



「……渡狸くん達は、ここが何処だか分かってるんだろうか……」
「少なくとも夏目さんは理解していらっしゃるかと」
「堂々と公開プレイか!! なかなかのドS!」
「……ご飯美味しい……」




End




リクエストありがとうございました!!
甘め……?な感じですみませんorz
渡夏凛様のみお持ち帰りOKです。


up:2012/03/20

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