X





数週間で娘と彼氏ができました。






「あらヤダ、しまりのない顔」



朝、事務所にやってきた波江さんの第一声はそれだった。

機嫌もよくて今日もシズちゃんと会う約束をしていたため知らずのうちににやけていたらしい。

架音にもさっき、『ママにこにこだね』って言われたし。かなり浮き足立ってるみたいだ…。


波江さんはさらにそんなんで仕事できるのかとか、惚気話しなんて聞かないからとまで言われた…ちょっとくらい惚気させてよ。


そんなこんなで波江さんにブーブー文句をいいつつ11時頃まで仕事をして、出かける用意に取り掛かった。

私の手料理が食べたいというシズちゃんに今からお弁当を届けに行くために。


「波江さん、今から池袋までシズちゃんにお弁当届けてくるね。カノと波江さんの分もあるから先に食べちゃってて〜。」

「あら、カノと平和島静雄と三人で一緒に食べてきたらいいじゃない。」

「……だ、大丈夫かな。カノ、シズちゃん見て一回泣いてるし」
「平気でしょ?」


何を根拠に波江さんが平気だって言うのか分からない…。気まずい雰囲気になったとき私耐えられない気がする…

しばらくどうしたものかと考えていたが結局、『おそとでおべんと、たべるの!』とやけにキラキラした眼の架音に負けた。








そんな経緯もあって、件の池袋。シズちゃんの会社。

前回の告白騒ぎで顔を覚えられたらしく声をかける前に平和島さんはこちらですよーと案内された

案内された室内にはシズちゃん以外にも社員が複数いて私と手を引いた架音を見てシズちゃん以外の全員がフリーズした。いや予想通りすぎる反応だけどざ…
子持ちの人妻に手出すとはさすがだな…とか不倫はどうなのかとか聞こえてる聞こえてる。シズちゃんは嬉しいことに私しか見えていないのか真っ直ぐこっちにやってきた。

うわ、シズちゃん犬みたい…

尻尾ふりまくりなゴールデンレトリバーね。


「シズちゃんちょっと待って、不倫とか昼ドラな関係って思われたくないから」

「誰が不倫してんだよ?」

「はいはいシズちゃんは黙っててねー。」


みなさーんと声をかけてこちらに注目を集めるとさっそく誤解を解く。

「私、未婚ですよー。この子は最近引き取った義理の娘です。残念ながら昼ドラな展開はありませんよ〜」

架音にはい、挨拶してと言えばお決まりの指を5本出して

「おりはらかのん5さいです。おねがいします。」

ぺこりと頭を下げる姿は我が娘ながら本当に愛らしい。事務職員以外にもシズちゃん同様取り立てのちょっとこわい人たちまで明らかにキュンとしてたよ。

きっと架音がいれば世界は救われるよね。

挨拶した後は人が大勢で恥ずかしいのか架音は私の後ろに引っ込んでしまった。


シズちゃんに一緒にお昼食べようと言えばじゃぁ、と会社の屋上に連れていかれた。屋上緑化しているらしくちょっとした庭みたいな屋上にはベンチも設置してあった。

さてここで問題…。架音がシズちゃんに警戒心丸出しで私から離れようとしない。

シズちゃんも前回架音に泣かれているから案の定気まずそうだ。

「シズちゃんサングラス取らない?」

「おう…」

「カノはシズちゃんにこんにちはって言った?」

ぶんぶんと頭を振る架音にシズちゃんは怖くないよと言う。おずおずとシズちゃんを見上げた架音がこんにちはと呟けばシズちゃんもこんにちはと言った後、照れくさそうに架音の頭を撫でていた。

そのやりとりで架音も警戒を解いたのかふにゃりと笑っていた。

お弁当を食べおわる頃には架音もすっかりシズちゃんに懐いて、今は駅までの道を架音は肩車されていた。


「シズちゃん。たかいね」

「んー。落ちないようにしっかり掴まっとけよ」

ちなみに堂々三人で出歩いちゃ、情報屋じゃなくて平和島静雄の女と子供ってことで危ないんじゃないかってところは心配ご無用。情報操作なんて朝飯前だからね。 平和島の女はとあるマフィアとか組の大事な一人娘で手を出せば近くにいる護衛によって消されるといった類の嘘を流しておいたからね。


シズちゃんと架音も仲良くなって私は相変わらずご機嫌だ。

肩車しているシズちゃんと架音の写メを撮った私はしっかりとそれを待ち受けに設定したのだった。

おわり
………………………………………静雄VS架音は勃発しませんよww
キューピッド波江絶賛活躍中。

[ 58/103 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -