※兄妹





「どうして…?ねえ、どうして?なんでもう会えないの?答えてよお兄ちゃん…っ!」



なんでなんで。優しくてかっこよくて強いお兄ちゃん。いつだって私のことを守ってくれる自慢のお兄ちゃん。香苗、って甘く優しい声で名前を呼んで大きくごつごつした手で私の髪をくしゃって撫でてくれる度に胸がきゅんってするの。大好きなお兄ちゃん。なんで、なんで私の前からいなくなっちゃうの?ねえ、なんで?



「…香苗、悪い」



どうしてそんなに苦しそうに私を見るの?


お兄ちゃんは煙草の香りだけを残し、どこか遠くに行ってしまった。
泣きじゃくる私を置いて。





お兄ちゃんの犯罪係数が規定値を超えてしまったことを知ったのはそれからしばらく経ってからだったー…






**






「香苗…?どうして、ここに」



三年前、もう二度と会わないと誓った妹が俺の目の前に立っている。
犯罪係数が規定値を超えたとはいえ、申請すれば身内との面会は可能だ。
だが俺はこの可愛い妹に影響を及ぼし、サイコハザードを引き起こすことを恐れてあえて突き放したのだ。


それも全て愛する妹の幸せを願って。



「あのね、お兄ちゃんがいなくなってから気付いたの。私、お兄ちゃんのことが好きで好きでたまらなかったんだってことに。兄妹なのにこんな感情を持つのはおかしいんだって。だから私のサイコパスこんなに濁っちゃったんだって。でもね、私、隔離施設で訓練頑張って、執行官の適性が出たの。お兄ちゃんと一緒にいたくて頑張ったんだよ?」



ぎゅ、っと抱きつき俺の胸に頬を寄せる香苗に戸惑いながらも、その髪をくしゃりと撫でる。



「俺の…せいで…」



「お兄ちゃんが私を置いていった時、すごく悲しかった。でもお兄ちゃんは私のことを想ってそうしてくれたんだよね?だから、いいの。それに…」



俺の首に手を回し、熱っぽい視線を絡ませる。
三年前はまだあどけなさを残していたのに、今は完璧にオンナの顔をしている。



「これからはずっと一緒にいられるよね?
……おにいちゃん」



妖艶に微笑む妹の艶やかなピンク色の唇が徐々に近付いてくる。
避けることなんて容易にできるはずなのに。
吸い寄せられるかのように俺は唇を重ねた。



もう絶対に逃がさない。

(その言葉はどちらが呟いたのだろうか)

2012/11/26
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