メモリィ・タイムリープ 01
誰かが、俺を呼んでる。
誰?
俺、まだ寝てたhttps://www.futoka.jp/admin/index.phpいんスよ。
とっても辛いことがあったから。
全部、最初から、やり直したい。
でもそんなの無理だから、こうやって深い眠りについて、全部忘れたい。
全部、悪い夢だと思いたい。

だから、俺を呼ばないでー……








「………おい黄瀬!!!!!」


「いっ、…〜!?!?え、あ……か、笠松先輩!?!?」



鈍い衝撃に意識が引き戻されると、目の前には笠松先輩が立っていた。
懐かしい、青いユニフォーム姿の先輩。
ついこの前、彼女の結婚式で久しぶりに会った時はスーツ姿で、似合わないっスね、なんて言ったら思いっきり叩かれた。あれ、なんで?笠松先輩、若い。



「え…?先輩?どうしたんスか…?なんか若くないっスか…?」


「ハ?お前何言ってんだ…?頭ぶつけておかしくなったか……おい!坂崎!氷用意してやれ」



その聞き慣れた名字は、つい先日変わったばかりのはずだった。
パタパタと後ろから近付く足音に、まさか、と思いながらもゆっくりと振り向く。



「涼太、大丈夫?思いっきりボール当たってたけど…どこか調子悪い?」



心配そうな表情で俺の顔を覗き込んできたのは、紛れもなく坂崎ゆきだった。



「………俺、頭おかしくなったかも」


「え、ちょっ、りょ…涼太…?」


「ゆきっち……」


「ど、どうしたの?なんで泣いてるの…?」



懐かしいジャージに身を包んだ彼女を抱き締め、年甲斐もなく泣いた。
ああ、でも何故か今の俺は高校生だ。まだ10代半ばなんだから泣いたって許される。それに、これはどうせ夢。夢の中でくらい、彼女を抱き締めたって良いだろ。



「お前は何してんだッ!!」


「いてっ!!…え……?」



笠松先輩に思いっきり叩かれ、少し冷静になった。
痛みを感じる。そういえばゆきっちの良い匂いも、温もりも感じる。体育館の床は堅い。周りを見渡せば、かつてのチームメイトたちが不思議そうに俺を見ている。

そっと自分の頬を抓ると、じんじんとした痛みを感じた。




「夢じゃ……ない」


「…笠松先輩、なんだか涼太の調子が良くなさそうなので早退させても良いですか?」


「……そうだな。坂崎、頼んでも良いか?」


「はい。ドリンクだけ用意したら連れて帰りますね」


「おう、頼んだ」



俺が呆然としている間に、彼女が手際良く状況を処理していく。
抱き締めたまま動かない俺の肩を優しく叩き、目線を合わせる。



「涼太、着替えてきて?一緒に帰ろう」



その言葉に頷くことしかできず、感動のあまりまた目頭が熱くなるのをなんとか堪え、俺はロッカールームへと向かった。
まずは、落ち着かないと。


懐かしい制服に着替え、ポケットに入っていた携帯電話の画面を見る。



「うそ…だろ…」



そこに表示されていたのは、紛れもなく8年前の日付。

俺が、彼女が、16歳の初夏ー…



「は…はは……夢にしてはやたらリアルっスね……っ…なんだよ、これ…」



わけがわからない。
でも、これは、もう一度やり直すチャンス?

火神っちとはまだ仲良くなっていないはずの16歳のゆきっちがいて、あの時とは違う俺がここにいる。

(言えなかったたくさんのこと、今度はちゃんと言うよ)

2014/8/27



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