「ねえ、タバコ吸うの、やめない?」
「お前、俺に死ねって言ってんの?」
「死なないでほしいから、言ってんの」
美味しそうに吸っていたタバコを口から離し、彼は不満そうな声をあげる。瞳孔開いてる、開いてるよ!あ、いつものことか。
「んだよ、急に。いつも吸ってるのに今日に限って」
「テレビの特集でやってたのー。タバコは百害あって一利無しって、ね。絶対トシの肺の中真っ黒だよ?死んじゃうよ?私、トシには長生きしてほしいなあ」
「………お前より長生きしたくねぇよ」
「え?……なんで?」
予想外の一言がトシの口から漏れ、思わずじっと顔を見つめた。
あ、そっぽ向いた。あ、耳が赤くなってる。
お前のいない世界で生きるなんて考えられねぇよ、とかそういうこと?そういうことだよね?そういう風に都合良く解釈しちゃうよ?
「でもさあ、副流煙っていうの?タバコ吸う人の側にいる人の方が有害物質を多く吸ってるんだって。私はトシから離れられないし、トシもタバコやめないなら、このまま副流煙吸い続けて私早死にしちゃうかもな〜」
ジュッ。
私が言い終わる前にトシはタバコの火を消した。
「…タバコ吸わないの?」
「……うるせェ」
(愛されてるなあ)
2014/7/26