プリメーラ -PREMERA- | ナノ


A countdown to the parting -1- [awake] 2










止めて

止めて…


止めて!!




ガキイッ



…ドォンッ




「…司れ!!」


「「「!!!!!」」」




渾身の力で振り払った刀の切っ先が
彼女の頬を掠め薄く線を引くと同時に

軌道のズレた白雷が壁を壊した。




少女は藍染を押し退けると

その瞳を怒りに滾らせ
自身の刀を解放するために構える。



だがしかし


すかさず両側から伸びて来た手に
それは危うく阻まれた。




「…っ離して!!


 

 要!!ギン!!」




動きを封じられたイアンは

右手首を掴み上げ
刀を落とさせようとする東仙と

左腕を後ろに捻り上げ
少女の背中で固定する市丸に

前のめりに押さえ付けられながらも
喚き散らす。




「…すまないがそれは出来ない」




嗜めるように静かに話す東仙に
抵抗すべく力を篭めると

ミシリと骨が鳴った。




「…イアン」




抵抗を弱める気が無いイアンに
言い聞かせるように名を呼ぶ。

すると
燃えるような瞳がギロリと東仙を捉えた。




「…あかんやん藍染さん

 こないな所で解放なんかされたら
 潰れてまうよココ」




そうなったらなったで面白いかもしれないが


と嗤う市丸が
掴んでいた腕を更に捻り上げた。

思わず少女の口から声が漏れる。




「…すまないね

 少々悪戯が過ぎたようだ」




そう言い静かに瞳を揺らした男は
カツンと靴音を立て少女に歩み寄る。

イアンは顔をしかめ

床を見るように抑えつけられた状態でも尚、
無理矢理顔を上げ睨みつける。


目の前に立った藍染は
睨むイアンに嘲笑を零すと

スッと腕を上げた。




「…っ」




少女は伸びてきた腕に
反射的に瞳を閉じその身を硬くした…が


予想していた類の痛みなどは来ず



むしろ

いつまで立っても何も起こる様子が無い。

不審に思った少女が
そっと瞳を開けようとした時




突如

しゅるりと音を立て
頭と顔に巻いていた布が剥ぎ取られた。




「…っ……?」




バサリと纏めていた髪が落ちる。




「あっ…!!」




と同時に
瞳を開けた少女の周囲に

フォッと音を立て霊圧が渦巻く。




「うっ…ぁぁああっ!!」




苦しげな声が漏れ一気に空気が渦を巻いた。

その勢いに圧されるように
咄嗟に二人が飛びのく。








轟々と音を響かせ
少女から放たれる霊圧は凄まじかったが

彼女を囲むように渦巻くそれは
今にも暴走しそうな程不安定であった。


もしも暴発などすれば

此処にいる誰もが
危険な状況に陥るにも関わらず

藍染は瞳を細めると
眼前の光景を満足そうに眺める。





やがて

うねりが大きく揺らいだ



と思った時


渦巻いていた霊圧は
一気に少女の中へ戻った。






「…やはりそうか」




空気の震えが止まり

一変して静寂に包まれる中



納得するように呟いた藍染の目の前には




もはや自分達となんら変わりない姿に
変化した少女が

産まれたままの姿で座り込んでいた。




「な…んで…」




呆然と呟くイアンを見つめ


藍染は微かに口の端を上げる。




「分かったのか、かい?

 愚問だよ イアン
 君がそれを頼んだのは誰だ?」





愚問、と吐き捨てられ

イアンは
磨き上げられた床を見つめたまま
目を見開くと

悔しげに唇を噛み締める。






「…お帰り



 イアン・ソピアー」






藍染の瞳の奥に

ゆらりと宿ったのは



侮蔑か

慕情か






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