プリメーラ -PREMERA- | ナノ


Is this nightmare...? 3








「…ざーんねん

 時間切れ や」




ヘラヘラと刀を下ろした市丸は囁くと
表情を強張らせた少女を見つめる。




「…ギン」




静かな声が市丸を呼ぶ。

数歩
少女から距離を空けつつ振り向いた市丸は
笑顔のまま肩を竦める。




「遅いやないですか

 危うくこのコ死ぬとこでしたよ」




やれやれとわざとらしく溜息を吐く市丸を
藍染は一瞥し目を細める。




「殺すところだった



 …の間違いなんじゃないかい?」




微笑みで覆い隠された射抜くような視線が

市丸に突き刺さった。


だが顔色を変える事もなく
市丸はプラプラと手を振る。




「イヤやなぁ
 勘違いですよ

 ボクがそんなことするわけないです」




ケラケラと笑いながら藍染を見返す市丸に
藍染は無表情で応える。




ただならぬ空気が二人の間に流れたが

一瞬の後
藍染はぐるりと視線を辺りに向けた。




「…まあ いいさ



 ところで

 君に任せていた三体はどうした?」




辺りを確認した藍染は
居るはずの者が居ないことに疑問を掲げ

市丸は藍染の問い掛けに
貼り付けた笑みで答える。




「ああ

 さっき殺したとこですわ」




なんてことなさそうに答える市丸の
笑みが増した。




「…そうか

 それは残念だ」




市丸の答えを受け藍染は
腕を後ろに組んだまま

ふむ と何かを納得するように頷く。



その時

未だ刀を構えたままのイアンの手が震えた。




「…本当…に…」




掠れた声に

藍染と市丸は声の主を見遣る。




「本当に…

 あなたが…?」




手の震えが 全身に伝わる。


まるで

この世の終わりを
目の当たりにしたかのような
絶望的な表情に

藍染は薄く笑む。




「…違う





 と、言えば君は満足するのかな

 イアン?」


「…っ!!」




自分を呼ぶ声に

イアンは足元が崩れていくかのような
感覚に襲われる。

身体の震えは増し

ガチガチと歯の根が合わさらない。




それを確認した藍染は

満足げに瞳を細めると
立っているだけで精一杯なイアンに
向き直った。






「…さあ



 戻ろうかイアン
 君が居るべき場所へ」








手を差し延べる藍染は



在りし日と同じ優しい瞳をしていた。






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A countdown to the parting [origin]


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