プリメーラ -PREMERA- | ナノ


A countdown to the parting -3- 4








-----あれは いつの日だったか




『お強いんですね』




…そう、言われた事がある。

別にその言葉には尊敬や畏怖が籠められていた訳ではなく

ましてや侮蔑や嘲笑

…といったものでも無かった。


しかし
不快感に襲われたことは

今でも鮮明に思い出せる。




…強い事は自身にとって

決して褒め言葉には成り得無かった。








…決して

自ら強くあろうとして

強くあった訳では無い。



ただ自身よりも
強い者が存在しなかった。


ただそれだけで

独往を余儀なくされた。




…時に


輪から大きくはみ出るものは

その輪の中には居られない。

異分子として
自動的に弾き出されてしまうのだ。


どんなに望んでも


…どんなに望まれても。




そうして弾かれた後にはいつも

寂しげにこちらを見つめる
仮面だけが残り

それまでの喧騒が嘘であったかの様な
静けさに包まれる。




それでも尚
近付いて来る者は跡を断たない。

新しい者が訪れる度に感じる
期待と希望は

少しずつ心を蝕む。




今度は 大丈夫かもしれない




しかしそんな淡い想いは

例外無く砕かれる。




尊敬

畏怖

憐憫

嘲笑

好意

敵意




そんなものはなんの足しにもならず

全て等しく滅えていった。




その度に訪れるのは落胆と絶望。




…どうせ滅えるなら
最初から無ければいい


仲間など無意味だ




彼等は

他と交じり合うことの出来ない力を忌み嫌い

自分達と
対等で無い者が近付く事を拒んだ。




今までは-----






何故

俺は此処に居る



何故

動けない




辛うじて立つスタークは
目の前の少女を見つめた。


視界は霞み手足に力が入らず

今にも崩れ落ちた方が楽だと思えるほどの
激痛が全身を襲う。




「イアン…」




眉間に深い皺を刻み
少女の名を呼ぶ。


こちらを見た少女が



泣き出しそうな笑みを浮かべた。




…お前も 俺の前から滅えるのか




唐突に訪れた虚無感に

スタークの身体の怠さが増した。


もうこのまま眠りに落ちてしまおうか

とも考える。




「スターク!!

 何やってんだよ!!」


「……リリネット」




指先に引っ掛けていた拳銃が
痺れを切らした様に叫んだ。




「動けよ!!

 イアン死んじゃうよ?!」


「…そうだな」




この状態では満足に動けない。


…それはリリネットも同様で
彼女もまた苦しみと闘っていた。




「くそっ…




 …お願い


 動いてよスターク…っ」








何故


こんな所に居るの


何故


動けないの



やっと


仲間を見付けたのに




悲痛な声が届くとほぼ同時

目の前のイアンに




刃が落とされた。




「イアンーー!!!」






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