A countdown to the parting -3- 1
「…冗談にしては度が過ぎてるぜ
イアン」
目の前で剣を構える少女は 微かに震えている。
それは恐怖からか
それとも
スタークに反した事への後悔か
どちらにせよ この状況は芳しく無い。
スタークは眼前のイアンを見据えた。
「退け イアン」
銃口を向けたままイアンを制するべく 声を掛ける。
「…申し訳…ありません……」
震える声で紡がれた一言は
彼女の全ての意思を表していた。
謝るイアンの顔は歪み 苦悩に満ちていた。
---虚が
唇を微かに動かした時
スタークは咄嗟に後ろを伺った。 …その時は確かに彼女の姿は在ったのだ。
…こんなことあるはずが 無い
目の前の少女は確かに自分の世話係で
容姿に何も変わりは無い。
だが
彼女から放たれる霊圧は
先程とは比べようが無いほどの密度を 発していた。
…これが本当のお前の力ってことかい
スタークは内心舌を巻く。
『横を通り過ぎた』
事に気付きもしなかったのだ。
この自分が。
「…面倒臭ぇ事になったな……」
視線を外し溜息をついた彼は
ふと
遠い過去を想った。
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失いたくないと
思ったモノは
いつでも
彼等の掌を
すり抜けていく
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「…スタークぅ………」
リリネットが 困惑した様子で声を掛ける。
「……………」
視線を戻し イアンを見つめるスタークは
…静かに引き金に指を掛けた。
「……!!?
スターク?!本気?!!」
カチャリという音に 慌てふためくリリネットの叫び声
それは
その後指に込められた力により遮られた。
「やだ!!やだよスタ…ッ『キュウ…ン…
銃口が白く光る。
「…イアン
……退け」
銃口を突き付けたスタークの瞳は
最後だ と
語っていた。
…だが
イアンはその瞳を真っすぐ見返した。
その表情は 既に覚悟を決めていて
判りきっていた答えに スタークは自身を嘲笑する様に口の端を上げた。
だがそれは
まるで泣いているようにも見えた。
…ゆっくりと二人の霊圧が上がってゆく。
何故こうなってしまったのか
何故こうしなければならないのか
答えは解っていても残酷なコタエしか無く
気持ちは確かに 同じ方向を向いているはずなのに
…イアンの瞳からは既に
収まりきらない涙が零れていた。
「あ〜あかんわ
そのコ殺すと藍染さん怖いねん」
ドスッ
「「!!!!!!!」」
突如
スタークの胸から刃が飛び出した。
彼の背後にはいつの間にか 誰かが笑みを浮かべて立っている。
その手に握られていたのは
------神槍
「市…丸……!!」
名前を呼ばれた人物は
およそこの場には相応しくない笑みを 浮かべていた。
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